イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「美弥子」

甘やかな声と共に、大きな手が目の前に。

ゆっくり視界をあげていくと、優しく見つめる切れ長の瞳とぶつかって。


自分の中の何かが、ぷつんと音を立てて切れるのがわかった。


自分の手を恐る恐る重ねながら――その景色がみるみるぼやけていく。


「さかた、くっ……」

「怖かったよな。よく頑張ったな」

「……っふ」

ポタッ……

頷いた拍子に床に雫が跳ねるのと、強く腕の中に包み込まれるのは、ほぼ同時だったと思う。

覚えのある体温と匂いに包まれて。

ぶわって。
堰を切った様に全身に安堵が巡っていく。
実はものすごく怖かったのだと、今更ながら気づいて……


「っく、坂田くん坂田くん坂田く――っ」


子どもみたいに泣きじゃくりながら繰り返すことしかできないわたしを、彼はただ無言で強く抱き、ずっと頭を撫でてくれた。

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