イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「なるほどね、姫は王子じゃなきゃイヤってわけだ。でも最初にピンチを救ったのは、おれなんだけどなー」

揶揄うような拗ねたような声がして、わたしたちはようやく顔をあげた。

視界を動かすと、河合さんの横にあぐらをかいたタトゥーの男が、ニヤニヤこっちを見つめてて。

「ご、ごめんなさい……、わたしお礼も言わずに……」

状況を思いだし、一気に蘇る羞恥心。
慌てて離れようとしたんだけど――

「おいエージ、邪魔するな」

強引な腕に阻まれてしまった。

「さ、坂田くんっ?」

「もう放さねえよ」
低音のささやきに、ゾクリと危うい刺激が走る。

「こっちの気も知らねえで、ウロチョロ余計なことばっかりしやがって。お前みたいな厄介な女は……もう放っておけない」

引き寄せられ、再び距離はゼロ。
心拍数もカウントできるほどの密着度に、くらりとした。

「だから、そばにいろ。すぐに抱きしめて、オレが守れる場所に」

トクントクントクントクン……


固い胸に頬を押し付けられながら、まるで愛の告白みたいなそのセリフを聞く。
心臓がもう、狂ったように暴れてる。

そんな風に言わないで。
そんなこと言われたら、期待しちゃうじゃない。
これ以上を、浅はかにも夢見ちゃうじゃない。
わたしだって、普通の女の子なんだよ?

でも、あなたには――


「だ、騙されてるんだ、君はっ!」

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