イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「思い出して、中村さん! こいつらは、反社会的勢力の一員なんだ! 危険極まりない社会のクズなんだ! キミにはふさわしくっ……うぐっ」
呻き声の原因は、たぶん横に座ってる彼のせいなんだろうけど……。
見なかったことにしよう。
「ここ、こんなことして、タダで済むと思うなよっ! 写真ばらまいてやるからな! エリート代理店マンの黒い過去と交際! はははっ週刊誌の見出しが目に浮かぶな!」
口から泡を飛ばし、狂ったような笑い声をあげる河合さんに、ドキッと不安が過った。
そうだ。
あの写真がネットに出たら……
「大丈夫」
こっちの気持ちを見透かしたように坂田くんが言う。
ど、どうしてそんな平気そうなの?
「あのさ、誰が反社会的勢力、だって?」
怠そうな口調で言ったのは、タトゥーの男だ。
「なんの根拠があってそんなことを言うのか、ぜひ教えてもらいたいね」
言うなり、中に着ていたTシャツの首周りをガバッと押し下げる。
喉からデコルテ、その白い肌が蛍光灯のもとに晒されて――……
「な!」
「ええっ?」
河合さんとわたしは、あんぐり、目も口も開いちゃった。
だって、髑髏のタトゥーがどこにも……なかったから。