イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

だって、注目を集めつつフロアを歩いてくる男性は。
何かを探しているらしく視線を動かしながらやってくる、その人は……

――え、あの人営業の坂田さんじゃないっ?
――なんで? めったにこないでしょ、こんなとこ。
――そうよ、来るとしたらアシスタントの方だもん。
――それにしても、いい男ねぇ。こういうの、目の保養っていうのね。

「先輩っ! 坂田さんですよ!」
「ちょっと、中村さんに会いに来たんじゃないの?」

一気にテンションを上げる2人に、「まさかぁ」と上ずった声で返し、そろりと確認すると。
バチっと音がしそうな勢いで視線が合ってしまい、動揺して思いっきり逸らしちゃった。

「先輩っこっち来ますよ!」

わかってます!
ざわめきと、そして近づく足音に、変な汗がにじむ。

いやいや、このフロアには他にも経理課とかあるし。
わたしの所なんか。

コツコツコツ……

嘘でしょ。
いやいや、ないない。

なんで、まさか――

「中村」
「はいぃっ」
身じろいだ拍子に。

ガタンッ!
膝がデスクにぶつかって……うわ、恥ずかしすぎる。

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