イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
22. 坂田くんの事情
まるで眠り姫のようだ。
病室で滾々と眠る青白い顔のしのぶさんを、ベッドサイドの椅子から見守りつつ心の中でつぶやいた。
特に外傷もなく、ただの貧血だろうって診断だったのに、夕方になっても彼女は目を覚まさなくて。
生きた心地がしない、とはこういうことを言うんだろう。
チラリと隣を伺うと、坂田くんは頭を抱え込むようにしてうなだれたまま。
さっきから一言も、しゃべらない。
何を……考えてるの?
わたしは数時間前、キッチンの床にしのぶさんを見つけた時のことを思い返した。
――しのぶさんっ!? しのぶさんっ!
名前を何度も大声で呼ぶと、わずかに唇から呻き声が聞こえた。
ホッとしたところへ、坂田くんが「どうした!?」って飛び込んできて。
――坂田くんっ、早く救急車! 救急車呼んでっ!
――…………
――坂田くん!?
彼は、呆然と突っ立ったままだった。
全然動いてくれなくて。
――しっかりして、どうしたの!?
駆け寄って揺すぶって、そこでようやく、彼の様子がおかしいことに気づいた――震えてた。
――あ、美弥子……
――大丈夫だよ、ちゃんと息してるから! 気を失って倒れてるだけ。
頷いてみせて、ここはわたしがなんとかしなきゃと携帯で119番に連絡して……