イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「オレが中学2年の時だった」
そうして坂田くんは訥々と、語ってくれた。
その日、何があったのかを。
「イブの昼過ぎ、オレと英二は、親父とクリスマスケーキを買うために駅前に出かけて。そこで親父がいきなり苦しみだして、意識を失って……」
街はイブの大混雑の真っ最中。
救急車の到着も遅れ、さらに病院への搬送も遅れ……
「真夜中近く、親父は息を引き取った。心筋梗塞だった」
――そうですか? 去年と同じにしか見えませんけど、オレには。
――だってしんどいだけでしょ、クリスマスなんて。
「働き盛りの突然死はよくあることなんですよ、だとさ。ふざけんな、って思ったね。親父の死が、“よくあること”なんかでたまるかってさ」
あぁそうか……って。
ベールが取り払われたみたいに、今までのすべてのことが一気にはっきりと形を成していくのがわかった。
――どこもかしこも、浮かれた奴らでいっぱいで鬱陶しいし、プレゼントは強請られるし。面倒くさいイベントとしか思えないですね。
救急車の中で聞いたクリスマスソング、カップルの笑い声……
どんなに白々しく響いただろう。