イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

――なんで? たかがクリスマスだろ?

好きになんて、なれるわけないよね。
クリスマスは彼にとって、悪夢の記憶しかないんだから。



「おいおい、なんでお前が泣いてるんだよ」

少し困ったみたいな声に、ようやく頬が濡れていることに気づいた。
「ごめっ……ごめんね」
顔をあげると、涙がボロボロあふれてくる。

「わたし、何も知らなくて。自分のことばっかり考えて……ごめんねっ」

泣きながらただごめんねって繰り返すことしかできなかったけど、それで彼には伝わったらしい。

「謝んな。ちゃんと説明しなかったオレが悪い」

温かな手がわたしの頭をくしゃりと撫で、そのまま肩を引き寄せられた。

「ロマンチックなデートを期待されてるってわかってたから、余計に言えなくて……ごめんな」

ふるふる首を振ると、また新しい涙がポタポタこぼれた。


「……お前みたいに、お袋も素直に泣いてりゃよかったのかもな」
「え?」

顔をあげると、静かな眼差しがしのぶさんを見つめていた。

「泣いてないんだ、お袋」

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