イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「泣いてない?」

「親父が死んでから一度も、泣いてない。少なくとも、オレらも含めて他人の前では。親父の葬式の時にすら、な。親戚連中はさ、冷たいとか情がないとか、散々なこと言ってたけど――」

言葉を切って、少し視線をあげる。
その先にいた英二くんが、小さく応えるように頷いた。

「おれたちには、わかってたよね。泣くことすら、できないんだって」

「あぁ、そうだ。中学生と小学生だぜ。何もできないくせにまだまだ金だけはかかるガキを2人も、これからたった一人で養っていかなきゃならない。親父と2人で始めたサロンは前の年に新築したばかりで、借金だってあった。ただこれからのことで頭がいっぱいで、涙流して悲しむ余裕なんて、どこもなかったんだ」


昨夜画面越しに見せてくれた、彼女の明るい笑顔を思い出す。
その裏に、こんなに大きな哀しみと苦しみを抱えていたなんて。

再び嗚咽を漏らして顔を伏せるわたしを、優しい腕があやすように抱きしめてくれた。

「きっとそうやって無理を重ねたせいで、少しずつ彼女の中で何かが壊れてたんだろうな。オレが20(ハタチ)を過ぎた頃から、クリスマスが近づくと酒を飲むようになって……で、ついに起こったのが、3年前の事件だった」

ベッドの端でモデルさながらの長い足を組んでいた英二くんは、その染み一つない滑らかな頬を歪めた。

「だから兄貴と決めたんだ。これから先、イブとクリスマス当日は、交代で母さんを一晩中見張ろうって。一人にすると、何やらかすかわからなかったから」

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