イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
もしかして、それでわざわざ来てくれたの?
朝、わたしを見てたって言うのも……そのせい?
ほんとに心配してくれたんだ、って意外な気がした。
「えと、うん、ありがとう。普通に帰れたよ」
あぁよかった。ほんとに怒ってないみたい。
さすが、イケメンは心までイケてるんだね。
金持ち喧嘩せずってやつ?
ネガティブに疑っちゃった自分が情けない。
でももちろん、謝った方がいいよね。彼が許してくれたとしても。
こっちの手もジンジンしてたし、かなり痛かったはず。
思いっきり周りに見られてるけど、もういっそここで、さらっと一言だけ……
心を決めたわたしは、椅子の角度を彼へと少し変え、揃えた膝の上で両手を握り締めた。
「あのね坂田くん、あの時はほんとに――」
仰向けた顔へ落ちる影に――言葉が途切れた。
彼がわたしへ上体を寄せたことを知り、ハテナが飛び交う。
「坂田、くん……?」
「今度の週末は空いてる?」
耳元でささやかれた声は、わたしにだけ届いた。
「は?」
週末?
ぽかんとしていると、彼がその双眸を思わせぶりに細くする。
「リベンジ、させてほしいんだけど」
え? は?
リベ? リベンジ……?
単語一つが脳みそに浸透するまでに、数秒、あるいはもっと、かかった気がする。
そしてようやく、その日本語訳が“復讐”であると頭がはじき出し。
ぶるるっと濡れた子犬みたいに身震いしてしまった。