イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「オレは知ってる。お袋がずっと、十分すぎるくらい頑張ってきたこと。だから……もし、そんなに親父のところに行きたい、早く会いたいっていうなら、止めない方がいいんじゃないか、止める権利なんてオレにはないんじゃないかって……」
何かを堪えるように片手で目元を覆ってうつむく彼の背中に、そろそろって手を回して撫でようとしたら、すぐに強い力で抱き寄せられた。
「っ……美弥子が、いなかったら……取り返しのつかないことになってたかもしれない。ほんとに、ありがとう」
身動きできないほど抱きすくめられ、温かな胸に頬を寄せる。
そして、返事の代わりにギュウッて彼の背中にしがみついた。
「……お前は、どこにも行くなよ? オレより先に、いなくなったりするな。約束してくれ」
降ってきた声は、空気に紛れて消えてしまいそうなほど、小さく弱弱しく……
あぁ、と瞼の裏が熱くなった。
お父さんが亡くなった時、彼だってまだ、たった中学生だったんだ。
動揺しなかったはずがない。
それでもきっと、お兄ちゃんだからって、無理して我慢して、いろんなことを飲み込んできたのかも。
お父さんの代わりにしのぶさんを支え、英二くんの面倒を見て……
「うん。行かない。どこにも、行かないよ……」
あふれる涙を隠すように、その胸に顔を深くうずめた。
もう絶対、離れない。
そんな気持ちを確かめるように、わたしたちは抱きしめ合った。
「……あのぅ、ものすっっごく感動的なシーンのとこ、申し訳ないんだけど」