イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
おおお、怒ってる。間違いない。
どうするのよ、やっぱり彼怒ってるよ。
わたしみたいな地味女子にご尊顔を叩かれちゃって。
めちゃくちゃ怒ってるんだよ。
はらわた煮えくりかえってるくせに、こんなキラッキラスマイルとか、
さすがだけど怖いよ! 坂田くん!
そういうことかと理解するなり、泣きたくなった。
こんなことなら、やっぱりあんな余計なお世話、しなきゃよかった……。
「この前は、オレががっついちまったせいで怖がらせたみたいだから。もう一回改めて……って、中村?」
でも、そうよね。
エリートの彼は、ご両親もきっとお上品な人たちなんだろうし。
子どもの頃も叩かれたことなんてなくて……人生初のショックだったのかも。
きっとそうだ。
あぁどうしよう……
幹部候補と言われるほどの人に睨まれちゃったんだよ。
イジメ、異動、左遷、いや最悪、解雇ぉ……?
マイナス用語が光速で頭をよぎるたび、目の前がどんどん暗さを増していく。
それはまずい、絶対にまずい。
わたしの将来設計に欠かせない、理想の職場なのにっ!
「おい、聞いてるのかよ、なかむ――」
「ちょっと倉庫の片づけ、行ってきます!」
勢いよく立ち上がると、ガシッと坂田くんの腕を掴んだ。
「お、おい?」
「坂田くんも、手伝ってくれないっ!? 手伝ってくれるの? ありがとうっ!」
あちこちから、ぐさぐさ突き刺すような視線が全身に降り注いでいたけど、構わず彼を引っ張って、わたしはフロアを後にした。