イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

人けのないエレベーターホールに駆け込んで。
端の非常階段に坂田くんを押し込むと。

わたしはそっとドアを閉め、先週末と同じく、上下の階段に人影がないか、足音がしないかを確かめた。
よしよし、大丈夫。

「この前と言い今と言い……中村っておとなしそうに見えて、かなり大胆なんだな」
振り返ると、くすくす、楽しくてたまらないって風に笑いをかみ殺す彼がいる。

どういう意味だろう、と聞き返そうとしたところへ、
しなやかな腕がするっと、視界を塞ぐように両脇の壁に伸びてきた。

「こんな所に男連れ込んで、悪いヤツ」

見上げる瞳に、自分の姿を見つけて。
俗に言う、壁ドンというものをされてる状況にようやく気づき、ギクリとする。

ももももしかして、墓穴掘った?

イキナリ、リベンジされちゃう?
殴られる?
ボコボコっ? 顔は止めてほしい、これでも嫁入り前だからっ!

「ちょ、ちょっと待って! あの、わたし、話を……」

押し返そうと触れた胸板は、びくともしない逞しさで。
意外なほど筋肉質な彼の身体をスーツ越しに感じてしまい、こんな時に何を色気づいてるんだ自分! と、もう羞恥心に視線が定まらない。

「へぇ、話って? 愛の告白でもしてくれんの?」

面白がるみたいな口ぶりに、わたしは「そうじゃなくて!」と必死で首を左右に振った。

「あああの、叩いちゃったことすごく怒ってるのよね? 痛かったでしょ、あれは謝る。ほんとにごめんなさいっ! あの時はびっくりして、わたしつい――」
「別に、怒ってないけど?」

「……へ?」

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