イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
やっぱり無謀かなぁ、逆プロポーズなんて。
飛鳥みたいな“いい女”ならともかく、と自分の格好――色がオフホワイトじゃなければ、就職活動中の学生に間違えられかねないスーツ姿――を見下ろす。
まずい、段々テンション下がってきた。
【ここまで来られたのは、ただただ一つの目的のためにがむしゃらに突っ走ってきたから。それに尽きます。どうしても、手に入れたいものがあったから。それは――、一人の女性です】
え、女性……?
聞き違いかとわずかに顔をあげれば、みんなも同様に怪訝そうな視線を交わしてる。
ざわめき始める聴衆を見渡し、坂田くんは手にしていたトロフィーを演台へ置いた。
【クライアントの皆様方にまで“本気の恋愛はしない男”だと噂された私が、そんなことを言うのはおかしいでしょうか? けれどどうか、ここで釈明させてください。私はなにも、一生誰も愛せない、という意味でその言葉を口にしたわけではないのです】
今や会場中がしんと静まり返って、彼の言葉を待っている。
【『本気で惚れた女は、絶対手放すな。必ず嫁にしろ』、亡き父が生前、何度も口にした言葉です。ですから、幼心に刷り込まれていたんでしょう。本気の恋愛とは、結婚を前提にしたものであるべきだと。けれど、当時の私には借金がありました。大学進学の際に借りた金です。一体どんな女性が、借金のある男からプロポーズされて喜ぶでしょう? そこで私は決めたのです。金を返し終わるまでは本気の恋愛はしないと】