イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

そうだったんだ……知らなかった。
全然、真逆の意味に捉えていたなんて。

同じようなことを、みんな考えたんだと思う。
特に女性たちがざわざわとざわつき出した。

【ですが】

ざわめきを縫って、彼の声が再び響く。

【人生、そんなに計画通りにいくもんじゃありません。入社1年目にして、本気の恋愛がしたいと思う相手に、出会ってしまったんです】

入社1年目……?
え、誰?

わたしが彼とまともにしゃべるようになったのは、ここ数か月で……

もしかして、誰か他にいたってこと?

不安な気持ちのまま顔をあげた瞬間、――……坂田くんと視線が合ったような気がして、トクンと心臓が高鳴った。


【同期のあいつを、いつも目で追ってる自分に気づいた時にはもう、恋に落ちていたんだと思います】


え……同期……目で追って……?

――毎朝一緒に坂田とここでタバコを吸ってて……ある時気づいたんだ。あいつの視線が必ず特定の女子社員を追ってることにね。

――その子が来そうな時間になると妙にソワソワして、エントランスばかり気にしてね。そしてついに彼女がやってくると、ゲートを通過してエレベーターの中に消えるまで、ずーっと切なげな目で見つめる。ね? 小学生かってくらい、わかりやすいだろ?


宇佐美さんの台詞が思い出されるにつれ、顔が火照っていくのが分かった。

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