イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

【おい坂田!】

マイクで拡張された、低く艶やかな声が響いた。
新条課長だ。

【進行を妨げた罰だ、即刻退場を命じる。総務課の中村美弥子も同様に、速やかに退場すること】

内容とは裏腹に、その口調には笑いが混じっていて、会場も大爆笑。


「了解しました。ほら走るぞ、美弥子っ!」

手を取られ、ぐいっと引っ張られ。

「ええっちょっと待って!」

つんのめる様に走り出す。


「美弥子、幸せにね!」
「美弥子先輩っ! おめでとうございますっ!」
「中村さん、お幸せに!」
「おめでとうっ!」
「おめでとーっ!」

拍手と口笛、歓声と紙吹雪の中を、2人して走り抜けながら。

大好きな人たちの顔が見えて。
まるで結婚式のライスシャワーみたい……

ねぇ坂田くん、ありがとう。
こんな素敵なサプライズ、生まれて初めてだよ。

繋がった手のぬくもりに、
わたしを振り返る彼の眼差しの優しさに、

もう……涙が止まらなかった。


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