イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「あぁやっちまったな、って思ったよ。自分がどんな風に噂されてるかは知ってたからさ、まずはそれを払拭するように、じっくり誠意を見せて口説いていくつもりだったのに……。まさかお前もオレに気があるんじゃないか、とか舞い上がっちまって我慢できなくて、計画が頭から吹っ飛んでた」
「そ、そうだったんだ……」
――行かないでほしいんだ?
――意外、だったな。中村から、なんて。
そう言われれば、どことなく口調が弾んでいたような、と思い出して、自然に口元が緩んでしまった。
「この後でどんなに好きだとか言ったところで、絶対真面目に受け取ってもらえねえだろ? しかもお前はもう婚活始めちまうし。で、とっさに苦肉の策をひねり出した、ってわけ。婚活を阻止しつつ、仲を深めていこうってね。もう必死だった」
全然必死そうには見えなかったけど……。
もちろん、もう彼の気持ちを疑うつもりはない。
「それなのに予想外の邪魔が入って、会えなくなって……あの時は、結構ヤバかったな」
予想外の……って、河合さんのことだよね。
1か月前の恐怖が一瞬過ってしまい、自分の身体へ回された坂田くんの腕にしがみついた。
応えるように、彼は強く抱いてくれて。
あぁここは、この場所は大丈夫だと、安堵が広がっていく。
「オレとしては、それでもできる限りの気持ち、伝えたつもりだったんだけど。全然伝わってなかったみたいだし」