イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「気になってるんだろ、オレのこと? お前が知りたいなら、教えてやってもいい――何もかも全部」
声の調子が、変わった。
揺らしたわたしの目を受け止めたのは、チャラい口ぶりとは裏腹の、思いがけないくらい真剣なそれで。
「坂田、く――」
冗談キツイよ、って笑い飛ばせない、どこか思いつめたような光が、わたしを絡めとる。
石になれ! って魔法でもかけられたみたい。
唇は重たくて。
何も言い返せない。
どうしよう、どうしよう。
ここで西谷さんのことを打ち明けるべき?
でも信じてくれるかな?
彼女は彼の信頼するアシスタントだし、わたしの言うことなんて……
狼狽しながら考える間にも、伏し目がちに頬を傾け、綺麗な顔が近づいてくる。
前と違ってスローモーションの今回は、すべてがはっきりと見て取れた。
流麗なラインを描く二重瞼、女子並みに長いまつ毛、シミ一つない頬、男らしく厚みのある唇……
体全部が空のドラム缶になったみたいに、暴走する心臓の音が全身へ響き渡る。
どこも拘束はされてない。
だから、逃げられるはずなのに。
わたしは、動けなくて――ギュッと、すべてから逃げるように両目を閉じた。