イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
3. それぞれの事情
RRRRR……
止まった時間を動かすような、機械的な着信音。
舌打ちが聞こえ、目を開けた。
坂田くんは雑な仕草で内ポケットから携帯を取り出すと――眉をひそめる。
「悪い、時間切れだ。行かないと」
「坂田くん、あの――」
「ってわけで、週末空けといて。日曜がいいかな、デートしよう。逃げるなよ? まぁ逃がさねえけど――あ、お世話になっております。はい、これから御社の方へ……」
最後の方は携帯に向けて話しながら、彼の姿はあっという間にドアの向こうに消えてしまって。
パタン――……
一人きりになった途端、がくがくと足が小刻みに震えだし、
その場にしゃがみこんでしまった。
な、なにあれ、なにあれ……
何だったの?
シャツの上から胸元を掴んで、深呼吸する。
欲しい? 週末? デート?
なんか、誘われた、みたいな? わたしが?
いやいや、なんで?
どうして彼みたいな人が、わたしなんか相手にするわけ?