イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
あっという間の出来事で、何がなんだか全然わからない。
わからない、けど……
こっちは何も同意してない、よね?
うん、してない。何も言ってない。
言うヒマがなかっただけ、だけど。
デートなんて、行かないよ?
彼とわたしなんて釣り合うわけないし、いいよね?
大丈夫だよね?
声に出して、何度も大丈夫だと言い聞かせるんだけど。
――逃げるなよ? まぁ逃がさねえけど。
胸のざわめきは、なかなか収まらなかった。
◇◇◇◇
「ほんと、信じられないでしょ。よく知りもしない相手に、だだ抱きたい、だよ?」
“抱きたい”の部分を携帯へ声を潜めて言ってから、パパっと素早く目を走らせた。
午後6時過ぎのスーパーは、会社帰りらしいOLたちでにぎわっているけど。
みんな早く買い物を済ませて帰りたい思いは同じらしく、誰も周囲なんか気にしてる様子はない。
ホッとしたわたしは再びカートを押す手に力を込め、携帯へ意識を戻した。
「同僚には散々揶揄われるし……同期会の打ち合わせの話だって誤魔化したけど、嘘だって疑ってるみたいだし……ほんとに今日みたいなことがあるのは困るの! だから、ねえお願い助けて!」