イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「どうしたんですか? ぼんやりしちゃって」
「あ……ごめんね。なんだっけ?」
ポスター貼りの途中だったことをようやく思い出し、急いで笑って誤魔化した。
これ――掲示板管理――も、立派な総務課のお仕事だ。
電子掲示板やEメールへの移行がずいぶん進んだけど、まだポスター告知もたまにあって。そのたびにこうして人力で貼り替えるのは、結構面倒だったりする。
「何か悩みなら聞きますよ? あ、ていうか、梓沙先輩誘って、今夜あたり飲みに行きます?」
ウキウキと目を輝かせた後輩に、「あーごめん」と両手を合わせた。
「今夜は予定があるんだ」
「デートですか?」
「違うよ、料理教室に行くの」
答えながら、残りのポスターの束を床から拾い上げる。
「え、先輩って習ってましたっけ?」
そっか、いろいろあってまだ話してないんだっけ。
「そうじゃなくて。ほらYKDカルチャースクールのやつ」
言うなり、きゃあ! って彼女が床から数センチ飛び上がった。
「それってそれって、恋人ができるって評判のやつですよねっ?」
「そうそう、知ってる?」
「知ってますよっもちろん! めちゃくちゃ倍率高いんでしょ? すごいっ! よく抽選通りましたね」
「ううん、落ちたんだけど、キャンセルが出てねっ」
「うわぁお、ラッキーですねえ!」
「でしょでしょっ!?」
ガチャッ