イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

きゃあきゃあ騒いでたわたしたちは、すぐ脇のドアが開く音で、ピタッと口を噤んだ。

ここは……会議室、のはず。
しまった、会議中だったかな。うるさかったかも?

光莉ちゃんと気まずい視線を交わしつつ、廊下の端に寄り、神妙にしていると。

ドアが小さく見えるくらい、堂々たる体躯がぬっと現れて――隣でハッと小さく息を飲む音。
姿を見せたのが営業部の新条(しんじょう)和馬(かずま)課長であることを知り、こっそりなるほどと頷いた。

“結婚したい男性社員”不動の1位であるこの人が、彼女は入社当時から大のお気に入りなのよね。

(超かっこいぃい~眼福ぅ~)
(うんうん、よかったね)

目線でやり取りしてから、「お疲れ様です」とそろって頭を下げる。

「お疲れ」

低く落ち着いた美声に、彼女がきゅんきゅんしてるのがわかる。

こらこら、彼氏に言いつけるぞ。
揶揄ってやろうと口を開きかけたんだけど――続いて出てきた人物を認めて、今度はわたしの喉の奥から、ヒッて小さく音が漏れた。

坂田くんだ。
その後ろから、西谷さん。

そうだ。
木曜日午後4時から第3会議室って……彼が予約してたの、ここじゃないか。

< 69 / 539 >

この作品をシェア

pagetop