イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

――うっわ、菜々美、ガチでやるの? 
――当たり前。ガンガン飲ませて、こっちのペースにしちゃう。坂田さんなら断らないでしょ?
――そんなにうまくいくかなぁ。
――その気にさせて、ピル飲んでるから大丈夫って誘うの。わざわざゴムなんかつけないって。
――確かに、正攻法だと難しいかもだね、あの人と結婚は。
――でしょ? クライアント受けいいから、お見合い話もじゃんじゃん来てるらしいし。春になれば若くて可愛い新入社員も入ってくるし。うかうかしてたら横から掻っ攫われて、うちらはお局まで一直線だよ?
――そうだね、優良物件はどんどん彼女持ちになっちゃうから、ぼんやりしてちゃダメなのかも。
――そういうこと。だから絶対、今日決めるから。応援よろしく。


『それって、今夜坂田と避妊しないでヤっちゃって、責任とって、って迫ろうってこと? あの子、妊娠までするつもりなわけ?』

携帯から聞こえた親友の声で我に返り、「そうだと思う」って答えた。

カタリとも音の聞こえない非常階段、吸い込まれたその声はやけに心細げに消えていく。

「ねえ飛鳥、どうしよう?」

そりゃ、坂田くんとは特別親しいってわけじゃない。
同期と言っても100人近くいるし、所属部署も違う。

行動も容姿も派手な彼とは、わたしとしてはあまり関わりたくないというか。
そもそも業務以外で話したことなんて、数えるほどしかないし。

それでも……
あんな話を聞いちゃったら、気分よくないじゃない?

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