イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

開いた口がふさがらない、とはこのことだ。
なぜかというと、駆け込んできたのは……


「本社営業部の坂田慎太郎さんですね、お待ちしてました。あちらへどうぞ」

先生が指している“あちら”とは、紛れもなくこの台だ。
つまり、彼のペアは……

「あなたのペアは、ええと、総務の中村さんですね」

いやいやいや、待って。ありえない。
嘘でしょ。
誰か嘘だと言って……

「すみません、エプロンを忘れてしまったんですが」
「あら? じゃあ今回は教室のものをお貸ししますけど、気を付けてくださいね」

「ありがとうございます」とエプロンを受け取り。
ニッコリ極上の微笑で講師を悩殺したらしい彼が、颯爽とキッチンを横切ってやってくる。

「な、な、な、ななな……」

「な、しか言えないのかよ」

固まってるわたしをチラッと見て口角を上げた彼は、ジャケットを椅子に放り、さっさとシャツの袖をまくり始めてしまう。

ほんとに参加する気?
そうなの? なんで!?

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