イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
――ねえねえ、あれって雑誌にも載ってた人でしょっ?
――超ラッキー♪ 後で話しかけてみよっか?
ラッキーじゃないっ! 全然!
悪夢でしかないっ!
混乱して狼狽えるわたしに構うことなく、てきぱきと黒いエプロンを身につけ、きゅっと紐を前で結ぶ坂田くん。
そんなシンプルな仕草にも、あちこちから湧く女性のため息と男性のブーイング。
お願い、みんな騙されないで。
確かにエプロン姿、めちゃくちゃ似合うけど!
腰のあたりとか色っぽい……いやいや、み、見惚れたりなんかしないし!
言い聞かせるようにブツブツつぶやき、視線を隣からベリッとはがした。
一体どういうつもり?
婚活なんて、絶対必要ないくせに。
わたしへの嫌がらせ? 考えすぎ?
あのビンタのこと、本当は怒ってて、とか……
頭の中はもう、ぐっちゃぐちゃだ。
「ええと、では皆さん、さっそく始めましょうか。まず材料がそろっているか確認してください――……」
あんなに楽しみにしていた料理教室なのに。
先生の声が、妙に遠く聞こえた。