イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

お手本となるデモンストレーションの後、それぞれの作業台でわたしたちは調理スタート。
すると――

「中村、これとこれ洗って切っといて。んで、レシピのここまで進めとけ」

坂田くんによって強制的に作業が指定されてしまい、「え? ちょ、え?」ってこっちはもうアタフタ。

「ほら、早く動け」
「はははいっ」

言いなりになるのは悔しかったけど、もうこの際早く終わってくれたらいいや、って半ば投げやりに考えたわたしは、自分の作業に没頭することにした。


驚いたことに、坂田くんは手際が良かった。ものすごく。

周りを見れば、自分の手をむくんじゃないかってくらい、恐ろしい手つきで皮むきしてる男性もいるのに。
彼の包丁さばきには全く危なげがない。

段取りも全部頭の中に入ってるみたいで、見ていて気持ちいいくらい、迷いなく次の作業へと移っていくし。

焦げないようにフライパンを揺り動かしたり、さっと余分な脂をキッチンペーパーで拭きとったり……細かいところまで自然に気を配ったりして。

これは……付け焼刃なんかじゃない。
ちゃんと普段から料理してる人の動きだ。
忙しい生活だろうに、すごいな。

「なんだよ? オレに見惚れてないで、ちゃんと自分の担当分働け」

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