イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

眉を寄せるわたしの前で、彼の指が1枚の名刺を選び出し、わたしの目の前へ突き付けた。

ええっと、河合(かわい)耕司(こうじ)……?
そんな人、いたっけ?

「うちの社員じゃないし、今日の参加者でもねえよな」

言われて、名刺を見直すと。
ほんとだ、東京都福祉保健局……って書いてある。
確かに今日の人じゃないよね。公務員?

「ええと、誰だっけ……」

名刺入れに入ってたってことは、名刺を交換したってことだ。
保健局の人と? いつ?
宙を睨みながら最近の出来事を遡って、探って……

あぁ! って、やっと記憶がつながった。
この前、綾瀬駅の前で話しかけてきた人だ!

――中村さん……中村美弥子さん、ですよね? 広告代理店にお勤めの。

名前を呼ばれて、振り返ると……30代前半くらい、かな。
真っ黒で固そうな髪をきっちり7対3に分けた、実直そうなサラリーマンが立っていて。

どうやら相手はわたしを知っているようだったけど、申し訳ないことに全く思い出せなかった。

すると彼は、名刺を差し出しながら説明してくれた。
先週末の婚活パーティーで、わたしが途中退席する直前に話していた相手だって。

――実は自分もこの近くに住んでるんですよ。偶然ですね。

パーティーの時は坂田くんのことで頭いっぱいで、それどころじゃなかったからな。覚えてなくて当然だ。

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