イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
曖昧に首をひねるわたしを見ながら、坂田くんがニヤリと片頬を上げた。
「まぁ、何もしなくたって、明日にはもうオレたちがつきあってるって、社内で噂になってるだろうけどな」
「えぇっ!?」
そういえば……。
さっきの料理教室、秘書課の2人も参加してたことを思い出して、血の気が引いていく。
おしゃべり好きの彼女たちのことだ。もうSNS上であることないこと、情報が飛び交ってる、なんてことも十分考えられる。
「そ、そこは、坂田くんがちゃんと説明すれば――」
「悪いが、聞かれたらはっきり答えるから。口説いてる真っ最中だって」
「なっ……」
「ただし、オレの提案を飲めば守ってやる。誰にもお前に手出しはさせない」
つまり……
トライアルを受け入れれば、噂が広がらないように否定してくれる、ってこと?
「うぅ」
どんどん選択肢がなくなって、追い詰められてるような気がするんだけど……
頭を抱えるわたしに、「それにな」ととっておきの秘密を打ち明けるみたいな笑みを浮かべて、坂田くんが声を潜めた。
「美弥子の方にもメリットあるんだぜ?」
「え……メ、リット?」
後から考えると。
いつの間にか“美弥子”呼びになってることにも気づかず、とっさに聞き返してしまったその時にはもう、彼の術中にハマっていたのかもしれない。