イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
5. 恋人契約
「さぁ、吐いてもらいましょう!」
「洗いざらい、話してもらうわよ!」
腕組みした梓沙さんと光莉ちゃんを前にして、はぁと吐息をつく。
坂田くんとトライアル交際の約束をした翌日、場所は高層フロアに作られた日当たり最高の社員食堂だ。
“本日のランチ(ミートソースナポリタン)セット”に手を付ける間も惜しんで、彼女たちが知りたがっているのは、もちろん坂田くんのこと。
2人だけじゃない。
わたしたちのテーブルを遠巻きにする女子社員たちも、こっちを見ながらひそひそナイショ話してて……たぶん、わたしの噂をしてるんだろう。
昨夜の段階で、かなりSNS上で情報拡散したらしいから。
しかも……
わたしはてっきり、トライアルを受け入れれば、坂田くんが関係を否定してくれるんだとばかり思ってたんだけど。
なんと朝一番、営業部で問い詰められた彼は、あっさり認めてしまったらしいの。
――『オレのだから、よろしく』って。男どもへの牽制と、女子たちへの忠告ってとこかな。カッコよかったよ、坂田。(飛鳥のラインより)
守ってやるって、手出しさせないって、そういうことか!
愕然としたのは言うまでもない。
思い込んだまま確認しなかったわたしも悪いけど。
これじゃ注目度マシマシになるだけじゃないか。
ただのトライアルだよ? そこんとこ、ちゃんとわかってるのかな彼は――
そんなこんなで。
総務部には朝から見学者が絶えず。
廊下を歩けば、そこここで内緒話が始まり……
噂を聞きつけた梓沙さんと光莉ちゃんに、ランチタイムになった途端連行されてきた、というわけ。
ぐいぐい、前のめりで目を輝かせる2人にはちょっと引いちゃうけど。
こっちの不満が溜まってるのも事実。
「じゃあ、ここだけの話にしてほしいんですけど……」
周りに聞こえないように声を絞りつつ、全部の事情をぶちまけることにした。