桃色のドラゴンと最強神~ドラゴン・ノスタルジア ~∞クスコ∞
忘れないからな!
「もしかしてお前、俺の思考が読めるのか?」
フツヌシは恐る恐る、天津麻羅に質問した。
「はい。お気になさらず。職業柄、私は人の思考を読む術式『把握心』を使っているのです」
いくら医師とはいえ、人の思考を読むのは犯罪じゃねぇのか。
「犯罪? とんでもない。神命を救うために一刻を争う事もありますので、『把握心』の使用については高天原医師法・第八条の八番によって、定められているのですよ」
この野郎、また俺様の思考を読みやがった。
個人情報も勝手に全部把握してやがるし、気に食わねぇ。
「お気を悪くされたら申し訳ありません。医師としての名誉にかけて、フツヌシさんの情報は守ると、固くお約束いたします」
かなり疑わしいが、今は、他に聞きたいことが山ほどある。
「さっきの『ミナコ』とかいう女が『クスコ』なのか」
「ええ。その通りです」
あの婆さんが最強神?
「それじゃ天界におわす深名様は一体……」
「最強神は現在、2体存在します。あまり周知されておりませんが」
最強神が2体いる?
そんなの聞いたことがねぇぞ!
デタラメ言うな!
「デタラメではありません。真実です」
いちいち思考を読むな、気色悪い!!
「すみません」
「いや、こちらこそ……心の中で怒鳴ってしまい、申し訳ない」
フツヌシは急に、心にもない謝罪を口にした。
「いえいえ構いませんよ」
意に反する言葉が口から出て来る事に関しては、どうしても慣れない。
逆に優しい言葉に言い換えれば、毒舌を吐く事ができるのだろうか。
「あなたが殺害しようとしたお方が最強の白龍神です。たとえ岩時の破魔矢に入り込んでどれほど暴れ、刺し貫いたとしても、生死に影響はないでしょう。最強神・深名孤様の強さは、桁違いですから」
ショックが大きすぎる。
天津麻羅の言う通り、本当にクスコが最強神であるならば、さすがに巨大破魔矢攻撃くらいでは死なないだろう。
「だが……あの太さの矢だぞ。いくら最強神とはいえ、体から抜けない限り、ジワジワとダメージは喰らっただろう」
「そうですね。入院された当初は痛みで泣いておられましたし。ですが、あの矢はそもそも誰かに『祝福』を与えるために作ったものです。例え強い呪いを込めて突き刺したとしても、誰かが抜き取ってしまえば、負の効力はいずれ消えて無くなります」
「抜けるのか? あんなに大きな矢を。誰が?」
「太さや大きさはあまり、問題ではありません。最強神にダメージを与えたり救うためには、強い影響を与えられるかどうか。その一点に限ります」
抜かれたら、あの血のにじむような苦労は全て水の泡というわけか。
あれだけ苦労したというのに、殺害はおろか、少ししかダメージを与えられなかったことに悔しさを感じる。
最強神が2体いること、そのうちの1体がクスコだということが判明した今、殺さずに済んで良かったと思うべきなのか。
そして、新たな疑問が次々と浮かぶ。
「天界におわす方の深名様は、一体何者なんだ?」
「黒龍神・深名斗様です」
ミナト様、だと?
ではやはり、あのお方も深名様だ。
「『深名』様は元々、同一の神でした。昼は女性、夜は男性の姿で幼少期を過ごされていたのです。フツヌシさん、あなたが生まれる前くらいまでは」
「……!」
「ところが、ある事件を堺に、深名様のお体は深名斗様と深名孤様に分かれてしまわれました。前代未聞の出来事です。先程詳しく調べたところ、最強神に無くてはならない、尾に咲いているはずの魂の花が、現在の深名孤様にはありませんでした」
天津麻羅によると、魂の花とは最強神だけが尾に咲かせる花であるようだ。
そして最強神が心を保つために、魂の花は大変重要なものであるため、尾の先から引き抜く事は言語道断であるらしいのだ。
「最強神は元々一つの存在。彼らが別行動をとる事により、世界の均衡が乱れています。魂の花を早く、彼らの体に戻さねばなりません」
担当医は別のようだが、麻羅も過去に何度か最強神・深名を診た事があるらしく、子供時代の彼らの状態についても色々と詳しいようだ。
「なあ。元は同一の神なのだとしたら……あの矢が刺さった事により、深名斗様もクスコと同等のダメージを食らっているのか?」
「恐らくそうでしょうね。体は分かれていても、全て繋がっているわけですから」
最初から、それが分かっていて……
深名斗様は自分自身を傷つけてもいいから、クスコを攻撃しようとした?
何故?
そもそも深名斗様はどうして、今回の勅命を下そうとした?
大きな矛盾を感じる。
要するにフツヌシ達は、体のいい捨て駒だったのではないか。
勅命は絶対で、従う他は無い。
失敗しようものなら、即死罪。
命令を下しておきながら、深名斗様はフツヌシ達5体が、自身の半身ともいえる深名孤にダメージを与えられるなどとは、夢にも思っていなかったのだろう。
ただの暇つぶしの、嫌がらせの、下らない遊びだったのである。
クスコが祭りだ何だと楽しそうで気に食わないから、少し痛い思いをさせてやろう、くらいの考えだったのかも知れない。
作戦に失敗した段階で利用価値の無いフツヌシ達を始末出来れば、それはそれでスッキリする、というわけだ。
勅命に本気で従わざるを得ない立場としては、たまったものではない。
「どのみち俺は殺される運命か」
クスコ殺害に血流を上げた結果、最強神・深名斗様と深名孤様の両方を傷つけた。
「そうとも限りません」
「?」
「これからは良い行いを、心がければいいと思いますよ。そのうちチャンスが生まれます。あ、そうだ。魂の花の採集などは、いかがでしょう。最強神の尾に咲いていた黒の花と白の花を、この病院まで持ってきてはもらえませんか? もしあなたが、ここでの出来事を覚えていたら」
「はあ?!」
何を言い出す、天津麻羅よ。
お前は俺の軍師様か?
「魂の花?」
「ええ。私はご同行できませんが。最強神のお二方に、一体の神様に戻っていただけるやも知れません」
口調は柔和だが天津麻羅の目は相変わらず、にこりとも笑っていない。
彼が持つ独特の静けさに、フツヌシはぞくりと鳥肌が立った。
「魂の花を戻す手術を施して、最強神お二方に元の、一体の神様に戻っていただきましょう。そうすればフツヌシさんは、処刑を免れて感謝されるかも知れません。上手くすれば、報奨金がもらえるかも!」
「……本当かよ。手術をすれば元の深名様に戻れるもんなのか? 本当に?」
「私は医師です。神々の体を治すのが仕事。彼らが元に戻らねば、世界が全て破滅するかも知れません。最強神のお役に立てばフツヌシさんが生き残れるかも知れませんよ! 退院後の運動も兼ねて、ぜひ!」
微かな希望の光だ。
俺様にも、生き残る可能性が出て来たか?
天津麻羅にまんまと乗せられたようで、悔しいが。
「アド」
天津麻羅の弟子であり研修医のアドが近づいて、フツヌシに一枚の紙を手渡した。
そこには何やら文字が書いてある。
「これは?」
「現実に戻った瞬間、大抵の神々はこの病院での出来事を、綺麗さっぱりと忘れてしまいます。少し覚えていたとしても、夢の中だったのかな、と思われるでしょう。この紙を見たら思い出せますので、無くさないようにしてください」
「……いいのか。患者にこんな大事な情報を喋っちまって」
天津麻羅は頷いた。
「どのみち、その紙を無くしたらアウトですよ」
どうも、キツネにつままれたような心地がする。
コイツ、魂の花を持ってこいとか言いながら、俺様をからかってやがるのか?
「からかっていません。紙など無くてもちゃんと覚えていられる神もいますので」
「俺様は全部、忘れそうだと言うのか?」
天津麻羅は少し考えてから、フツヌシを見て笑顔になった。
「そうですね。要注意です。怒らないようにして下さい。決して」
あ?
「怒りが沸き起こると、ここで過ごした事や話した事を、全て忘れてしまいます」
俺様に、怒るな、だと?
「怒らなければ、忘れません」
「怒らない……」
天津麻羅が嘘をついていない事が、雰囲気から伝わって来る。
「二つの魂の花は、この人間の世界にある螺旋城の地下深くに、埋められている可能性があります。空から眺めたところ、あの城から光が漏れてました。そうだ! 時の神スズネがいるでしょう、あなたのお仲間に。スズネに聞けば、螺旋城への行き方がわかるはずです」
「なるほど」
アドがフツヌシに話しかけた。
「ゴツゴツルツルさん! なる早でおなしゃす!」
ぷちーん!
フツヌシは、怒ってはいけない事を、もう忘れた。
ふざっっっけんな!
何が「なる早でおなしゃす!」だ!
俺様がお前らの命令を大人しく聞くと思ったら、大間違いだぞっっ!
「わかった。スズネに場所を聞いて、魂の花を二つだな? すぐに持って来よう」
うがー!!!!
これは俺の言葉じゃねえ!!!!
話にならん!!!!
「ありがとうございます。それでこそフツヌシさんです!」
麻羅は久しぶりに、満面の笑みを浮かべた。
鬼だ。
こいつ本当は、鬼畜生だ。
フツヌシは観念した。
こうなったらやるしか無い。
「それから。人間の世界へ行っても、決して本物の光る魂を食べてはなりません」
光る魂?
「手術をして判明したのですが、フツヌシさんの場合、光る魂が体質に合わないので、アレルギー反応を起こします」
まじかよ。
「本物の光る魂を食べたら、どのくらいアレルギーが出るか予測出来ません。くれぐれも注意してくださいね」
ムカつく奴だ、この俺様に指示するつもりか天津麻羅め、お前の言う事なんざ聞かねぇぞ、このやぶ医者めが!!
「わかった。食わないよう、細心の注意を払う」
もう気が狂いそうだ。
「それから、今の事も紙に書いておいてくれ……」
アドがすかさず、フツヌシの頼みどおり、紙に書き留めてくれた。
さらばだ天津麻羅よ。
こうしてフツヌシは、天津麻羅の病院を後にした。
フツヌシは恐る恐る、天津麻羅に質問した。
「はい。お気になさらず。職業柄、私は人の思考を読む術式『把握心』を使っているのです」
いくら医師とはいえ、人の思考を読むのは犯罪じゃねぇのか。
「犯罪? とんでもない。神命を救うために一刻を争う事もありますので、『把握心』の使用については高天原医師法・第八条の八番によって、定められているのですよ」
この野郎、また俺様の思考を読みやがった。
個人情報も勝手に全部把握してやがるし、気に食わねぇ。
「お気を悪くされたら申し訳ありません。医師としての名誉にかけて、フツヌシさんの情報は守ると、固くお約束いたします」
かなり疑わしいが、今は、他に聞きたいことが山ほどある。
「さっきの『ミナコ』とかいう女が『クスコ』なのか」
「ええ。その通りです」
あの婆さんが最強神?
「それじゃ天界におわす深名様は一体……」
「最強神は現在、2体存在します。あまり周知されておりませんが」
最強神が2体いる?
そんなの聞いたことがねぇぞ!
デタラメ言うな!
「デタラメではありません。真実です」
いちいち思考を読むな、気色悪い!!
「すみません」
「いや、こちらこそ……心の中で怒鳴ってしまい、申し訳ない」
フツヌシは急に、心にもない謝罪を口にした。
「いえいえ構いませんよ」
意に反する言葉が口から出て来る事に関しては、どうしても慣れない。
逆に優しい言葉に言い換えれば、毒舌を吐く事ができるのだろうか。
「あなたが殺害しようとしたお方が最強の白龍神です。たとえ岩時の破魔矢に入り込んでどれほど暴れ、刺し貫いたとしても、生死に影響はないでしょう。最強神・深名孤様の強さは、桁違いですから」
ショックが大きすぎる。
天津麻羅の言う通り、本当にクスコが最強神であるならば、さすがに巨大破魔矢攻撃くらいでは死なないだろう。
「だが……あの太さの矢だぞ。いくら最強神とはいえ、体から抜けない限り、ジワジワとダメージは喰らっただろう」
「そうですね。入院された当初は痛みで泣いておられましたし。ですが、あの矢はそもそも誰かに『祝福』を与えるために作ったものです。例え強い呪いを込めて突き刺したとしても、誰かが抜き取ってしまえば、負の効力はいずれ消えて無くなります」
「抜けるのか? あんなに大きな矢を。誰が?」
「太さや大きさはあまり、問題ではありません。最強神にダメージを与えたり救うためには、強い影響を与えられるかどうか。その一点に限ります」
抜かれたら、あの血のにじむような苦労は全て水の泡というわけか。
あれだけ苦労したというのに、殺害はおろか、少ししかダメージを与えられなかったことに悔しさを感じる。
最強神が2体いること、そのうちの1体がクスコだということが判明した今、殺さずに済んで良かったと思うべきなのか。
そして、新たな疑問が次々と浮かぶ。
「天界におわす方の深名様は、一体何者なんだ?」
「黒龍神・深名斗様です」
ミナト様、だと?
ではやはり、あのお方も深名様だ。
「『深名』様は元々、同一の神でした。昼は女性、夜は男性の姿で幼少期を過ごされていたのです。フツヌシさん、あなたが生まれる前くらいまでは」
「……!」
「ところが、ある事件を堺に、深名様のお体は深名斗様と深名孤様に分かれてしまわれました。前代未聞の出来事です。先程詳しく調べたところ、最強神に無くてはならない、尾に咲いているはずの魂の花が、現在の深名孤様にはありませんでした」
天津麻羅によると、魂の花とは最強神だけが尾に咲かせる花であるようだ。
そして最強神が心を保つために、魂の花は大変重要なものであるため、尾の先から引き抜く事は言語道断であるらしいのだ。
「最強神は元々一つの存在。彼らが別行動をとる事により、世界の均衡が乱れています。魂の花を早く、彼らの体に戻さねばなりません」
担当医は別のようだが、麻羅も過去に何度か最強神・深名を診た事があるらしく、子供時代の彼らの状態についても色々と詳しいようだ。
「なあ。元は同一の神なのだとしたら……あの矢が刺さった事により、深名斗様もクスコと同等のダメージを食らっているのか?」
「恐らくそうでしょうね。体は分かれていても、全て繋がっているわけですから」
最初から、それが分かっていて……
深名斗様は自分自身を傷つけてもいいから、クスコを攻撃しようとした?
何故?
そもそも深名斗様はどうして、今回の勅命を下そうとした?
大きな矛盾を感じる。
要するにフツヌシ達は、体のいい捨て駒だったのではないか。
勅命は絶対で、従う他は無い。
失敗しようものなら、即死罪。
命令を下しておきながら、深名斗様はフツヌシ達5体が、自身の半身ともいえる深名孤にダメージを与えられるなどとは、夢にも思っていなかったのだろう。
ただの暇つぶしの、嫌がらせの、下らない遊びだったのである。
クスコが祭りだ何だと楽しそうで気に食わないから、少し痛い思いをさせてやろう、くらいの考えだったのかも知れない。
作戦に失敗した段階で利用価値の無いフツヌシ達を始末出来れば、それはそれでスッキリする、というわけだ。
勅命に本気で従わざるを得ない立場としては、たまったものではない。
「どのみち俺は殺される運命か」
クスコ殺害に血流を上げた結果、最強神・深名斗様と深名孤様の両方を傷つけた。
「そうとも限りません」
「?」
「これからは良い行いを、心がければいいと思いますよ。そのうちチャンスが生まれます。あ、そうだ。魂の花の採集などは、いかがでしょう。最強神の尾に咲いていた黒の花と白の花を、この病院まで持ってきてはもらえませんか? もしあなたが、ここでの出来事を覚えていたら」
「はあ?!」
何を言い出す、天津麻羅よ。
お前は俺の軍師様か?
「魂の花?」
「ええ。私はご同行できませんが。最強神のお二方に、一体の神様に戻っていただけるやも知れません」
口調は柔和だが天津麻羅の目は相変わらず、にこりとも笑っていない。
彼が持つ独特の静けさに、フツヌシはぞくりと鳥肌が立った。
「魂の花を戻す手術を施して、最強神お二方に元の、一体の神様に戻っていただきましょう。そうすればフツヌシさんは、処刑を免れて感謝されるかも知れません。上手くすれば、報奨金がもらえるかも!」
「……本当かよ。手術をすれば元の深名様に戻れるもんなのか? 本当に?」
「私は医師です。神々の体を治すのが仕事。彼らが元に戻らねば、世界が全て破滅するかも知れません。最強神のお役に立てばフツヌシさんが生き残れるかも知れませんよ! 退院後の運動も兼ねて、ぜひ!」
微かな希望の光だ。
俺様にも、生き残る可能性が出て来たか?
天津麻羅にまんまと乗せられたようで、悔しいが。
「アド」
天津麻羅の弟子であり研修医のアドが近づいて、フツヌシに一枚の紙を手渡した。
そこには何やら文字が書いてある。
「これは?」
「現実に戻った瞬間、大抵の神々はこの病院での出来事を、綺麗さっぱりと忘れてしまいます。少し覚えていたとしても、夢の中だったのかな、と思われるでしょう。この紙を見たら思い出せますので、無くさないようにしてください」
「……いいのか。患者にこんな大事な情報を喋っちまって」
天津麻羅は頷いた。
「どのみち、その紙を無くしたらアウトですよ」
どうも、キツネにつままれたような心地がする。
コイツ、魂の花を持ってこいとか言いながら、俺様をからかってやがるのか?
「からかっていません。紙など無くてもちゃんと覚えていられる神もいますので」
「俺様は全部、忘れそうだと言うのか?」
天津麻羅は少し考えてから、フツヌシを見て笑顔になった。
「そうですね。要注意です。怒らないようにして下さい。決して」
あ?
「怒りが沸き起こると、ここで過ごした事や話した事を、全て忘れてしまいます」
俺様に、怒るな、だと?
「怒らなければ、忘れません」
「怒らない……」
天津麻羅が嘘をついていない事が、雰囲気から伝わって来る。
「二つの魂の花は、この人間の世界にある螺旋城の地下深くに、埋められている可能性があります。空から眺めたところ、あの城から光が漏れてました。そうだ! 時の神スズネがいるでしょう、あなたのお仲間に。スズネに聞けば、螺旋城への行き方がわかるはずです」
「なるほど」
アドがフツヌシに話しかけた。
「ゴツゴツルツルさん! なる早でおなしゃす!」
ぷちーん!
フツヌシは、怒ってはいけない事を、もう忘れた。
ふざっっっけんな!
何が「なる早でおなしゃす!」だ!
俺様がお前らの命令を大人しく聞くと思ったら、大間違いだぞっっ!
「わかった。スズネに場所を聞いて、魂の花を二つだな? すぐに持って来よう」
うがー!!!!
これは俺の言葉じゃねえ!!!!
話にならん!!!!
「ありがとうございます。それでこそフツヌシさんです!」
麻羅は久しぶりに、満面の笑みを浮かべた。
鬼だ。
こいつ本当は、鬼畜生だ。
フツヌシは観念した。
こうなったらやるしか無い。
「それから。人間の世界へ行っても、決して本物の光る魂を食べてはなりません」
光る魂?
「手術をして判明したのですが、フツヌシさんの場合、光る魂が体質に合わないので、アレルギー反応を起こします」
まじかよ。
「本物の光る魂を食べたら、どのくらいアレルギーが出るか予測出来ません。くれぐれも注意してくださいね」
ムカつく奴だ、この俺様に指示するつもりか天津麻羅め、お前の言う事なんざ聞かねぇぞ、このやぶ医者めが!!
「わかった。食わないよう、細心の注意を払う」
もう気が狂いそうだ。
「それから、今の事も紙に書いておいてくれ……」
アドがすかさず、フツヌシの頼みどおり、紙に書き留めてくれた。
さらばだ天津麻羅よ。
こうしてフツヌシは、天津麻羅の病院を後にした。