桃色のドラゴンと最強神~ドラゴン・ノスタルジア ~∞クスコ∞
血は、あげない。
邪心を殺す『真実の輪』にクナドが苦しめられている間、カナメは七支刀の柄頭を額につけて、召喚の呪文と格闘していた。
カナメはこれ以上、召喚術を発動する事が出来ない事に気がついた。
呼べる霊獣が近くにいないというわけではなく、召喚に使用できるカナメの力が不足しているのが原因のようである。
何とか三体の霊獣(全て女の子)を呼び出せたが、これで精一杯。
どうせなら六体すべて呼んでみたかったが、限界である。
「ここまでか…………」
カナメは大きく深呼吸した。
これが現在の、自分の力。
現状を受け入れ、考えろ。
精神力と体力が底を尽きては、他の神々と戦う事も叶わなくなる。
それにクナドを本殿の外へ追い出す事が出来なくては、本末転倒である。
「…………」
カナメは手の中にある刀剣を、想いのこもった眼差しで見つめた。
この七支刀は、もっと力のある者が持つべきなのでは無いだろうか。
自分では無く。
そういえば久遠様は、この刀剣を自分に授ける時、こう仰られていた。
「霊獣王の剣だ」
と。
霊獣王とは、霊獣の中で最も声が遠くに響き渡る者のことを指す。
こういった緊急事態が起きた時に、仲間全員を呼び寄せるほどの『影響力』のある者。
そういう存在こそ、この七支刀の力を最大限に使用できる。
それ以外の者がこの刀を持っていても、上手く活用できないのだ。
ただ振り回すだけでは、持っていても意味が無い。
もし、自分以上にこの刀剣を持つにふさわしい存在に出会えたその時は…………。
譲るべきなのかも知れない。
この刀を。
だが今はその時では無い。
その存在に出会うその日まで、守り通す他はない。
「グッ…………ぐるぢ、ぃっ!!!」
クナドの絶叫があたりに響き渡り、カナメはハッと我に返った。
頭を上げてちらっと見ると、クナドは女の子達に取り囲まれて、ぐったりと気を失いそうになっている。
『……一体何をされているんだ、この男は』
三人の女の子達は、冷酷な微笑みを浮かべてクナドを拷問していた。
ボロ雑巾の様にギュギュギュッ!! と羽冠で頭部を絞られ、クナドは悲鳴を上げている。
性欲にまみれた彼の本能ごと、無残にも脳内が捻じられていくようだ。
「痛いっ! 痛いっ!痛いっ! 苦しい!!!」
痛くない方がおかしい。
苦しくないわけが無い。
邪心を最後まで搾り尽くす、浄化の力に特化した純白の羽冠なのだから。
クナドに使えば効果は絶大。
彼は震えながら、なおも意味不明な言葉を呟き出した。
「女の子女の子女の子女の子女の子…………カワイイ女の子色っぽい女の子清楚な女の子小悪魔風女の子みずみずしい女の子なめらかな女の子」
邪心が満ち溢れた彼の脳内は、図解するまでも無く99パーセントが性欲で、残りの1パーセントで辛うじて道の神の仕事をしている状態だった。
「あら、まだ絞り方が足りないようですね」
サキは微笑を引っ込めて真顔になり、クナドの頭を締め付けている『真実の輪』に向けて念を送った。
性欲を主な動力源としていた哀れなクナドは、全身の欲望を搾り取られる苦痛と恐怖を味わった。
「や…………もう、やめ…………て」
「やめてほしい?」
サワはしめ縄の力を強めた。
「ギュワッ!!!」
クナドは猛獣の叫びに似た声をあげている。
「やめ…………」
狐の霊獣イズミは左の口角を上げ、悪戯を思いついた子供のように笑った。
「『最後の盃』!」
イズミが呪文を唱え終わると、白銀色の盃台が現れた。
「溜まったら、やめてあげる」
盃台に乗せられた白銀色の盃と銚子が浮かび上がり、巨大化していく。
「うーん。ちょっと入りきらないかな」
イズミがパチンと指を鳴らすと、盃は巨大な白銀色の蓋つき湯呑《ゆのみ》の形に姿を変えた。
「…………?」
クナドは力尽きる寸前の表情で、ただ茫然とその巨大な湯呑を見つめている。
イズミはクナドの耳元で囁いた。
「私達の血を何だと思ってるの?」
パチン! とイズミが指を鳴らしたその途端。
クナドが再度、悲鳴を上げた。
「ぐああああああぁっ!!!」
銚子が空中に浮かびあがり、盃の中にどんどん、どんどん、どす黒い血を注ぎ始めた。
絞られたばかりのクナドの血だ。
「「「おおおーっ!!!」」」
女の子達は、三人そろって拍手をした。
「すごい! 見たことないわ、こんなに汚い血!」
「女の子を呪うエロ男の血ですわね。一体何人の血を、吸い続けてきたのでしょうか…………」
「何千年、ううん、何万年にもわたるこの男の、ゲス歴史の賜物よ」
血はどんどん、どんどん、盃、いや巨大な湯呑の中に溜まっていく。
「この血を見る限り、卑怯な手を使って無理やり吸ったものは、どうやら一滴も無いようですね。きわめて残念なことに、この男の口車に乗って血を吸わせしまったバカでゲスな女たちが大変多かった、という事でしょう」
サキは冷静に、クナドの血について分析し出した。
「ちょ…………僕の血について、解説するのやめて…………」
「ゲス男の誘いに乗って、ゲス男のハーレムに入って、ゲス男とイチャイチャして、ゲス男と共に幸せになりたい欲まみれ女達など、ただのゲス女に過ぎないのに……。これだからゲス共は手に負えないのですわ。おお汚らわしい!! ゲスは死滅せよ!!!」
「や…………やめてやめてやめて下さい…………苦しいっ…………」
クナドの苦しみは、さらに追い打ちをかけるような拍車がかかった。
「さっきからあなたがしてきた事と、同じ事をしているだけです」
サキが言った。
「………………」
「あなたの様な男には、私達の血は飲ませてあげない!! ゲスと関わるのはごめんだわ」
サワの言葉に、サキは頷く。
「ゲスは死滅して下さい」
「女は甘いジュースじゃないのよ」
イズミは言葉を続けた。
「思想を持った生き物なの。女は男の反対側というだけ。あなたが変わらない限り……永遠に、お姫様の血を飲むことはできないわ」
クナドはがっくりと、石に括り付けられたまま首を垂れた。
「…………意識を失ったかしら?」
放心したように見える。
死んだようにも見える。
欲望の大部分を抜き取られたのだ、無理もない。
カナメは生唾を呑み込んだ。
これが、真の女の恐ろしさだ。
自分がされたような心地がする。
「…………もういい」
カナメの声が聞こえ、三人の霊獣の女の子達は振り向いた。
彼女らは生き生きしながら、カナメに尋ねた。
「あ、カナメ様!」
「邪な血をかなり吸い取りました!」
空中に浮かんだ白銀色の湯呑には、タプタプになるまでクナドの血が溜まっている。
イズミは呪文で蓋をタッパーのような素材に変え、ピッタリと上から蓋をして密封した。
「どのように処分しましょう?」
その湯呑に呪文をかけ、手のひらにおさまる小さなサイズに変え、イズミはそれを左手で持った。
カナメは複雑な気持ちで、三人の女の子達をまじまじと見つめた。
恐ろし過ぎる。
女性には気をつけよう。
どうしても手に入れたくば、たった一人を見つけ、大切に守ろう。
そうしよう。
「本殿の外へこの男を放り出す」
「ええ~? こんなに弱っているのに? 今がチャンスですよ?」
「殺しても良いのです」
「道の神の力は強大だ。我々の力では歯が立たぬ。ここまで力を削ぎ落しただけでも良しとせねばなるまい」
三人の女の子は目を見合わせ、しぶしぶ頷いた。
「これよりクナドを本殿から放り出し、二度と入れぬよう閂をかける」
カナメの指示を受け、三人の女の子達は頷いた。
「「「かしこまりました」」」
カナメはこれ以上、召喚術を発動する事が出来ない事に気がついた。
呼べる霊獣が近くにいないというわけではなく、召喚に使用できるカナメの力が不足しているのが原因のようである。
何とか三体の霊獣(全て女の子)を呼び出せたが、これで精一杯。
どうせなら六体すべて呼んでみたかったが、限界である。
「ここまでか…………」
カナメは大きく深呼吸した。
これが現在の、自分の力。
現状を受け入れ、考えろ。
精神力と体力が底を尽きては、他の神々と戦う事も叶わなくなる。
それにクナドを本殿の外へ追い出す事が出来なくては、本末転倒である。
「…………」
カナメは手の中にある刀剣を、想いのこもった眼差しで見つめた。
この七支刀は、もっと力のある者が持つべきなのでは無いだろうか。
自分では無く。
そういえば久遠様は、この刀剣を自分に授ける時、こう仰られていた。
「霊獣王の剣だ」
と。
霊獣王とは、霊獣の中で最も声が遠くに響き渡る者のことを指す。
こういった緊急事態が起きた時に、仲間全員を呼び寄せるほどの『影響力』のある者。
そういう存在こそ、この七支刀の力を最大限に使用できる。
それ以外の者がこの刀を持っていても、上手く活用できないのだ。
ただ振り回すだけでは、持っていても意味が無い。
もし、自分以上にこの刀剣を持つにふさわしい存在に出会えたその時は…………。
譲るべきなのかも知れない。
この刀を。
だが今はその時では無い。
その存在に出会うその日まで、守り通す他はない。
「グッ…………ぐるぢ、ぃっ!!!」
クナドの絶叫があたりに響き渡り、カナメはハッと我に返った。
頭を上げてちらっと見ると、クナドは女の子達に取り囲まれて、ぐったりと気を失いそうになっている。
『……一体何をされているんだ、この男は』
三人の女の子達は、冷酷な微笑みを浮かべてクナドを拷問していた。
ボロ雑巾の様にギュギュギュッ!! と羽冠で頭部を絞られ、クナドは悲鳴を上げている。
性欲にまみれた彼の本能ごと、無残にも脳内が捻じられていくようだ。
「痛いっ! 痛いっ!痛いっ! 苦しい!!!」
痛くない方がおかしい。
苦しくないわけが無い。
邪心を最後まで搾り尽くす、浄化の力に特化した純白の羽冠なのだから。
クナドに使えば効果は絶大。
彼は震えながら、なおも意味不明な言葉を呟き出した。
「女の子女の子女の子女の子女の子…………カワイイ女の子色っぽい女の子清楚な女の子小悪魔風女の子みずみずしい女の子なめらかな女の子」
邪心が満ち溢れた彼の脳内は、図解するまでも無く99パーセントが性欲で、残りの1パーセントで辛うじて道の神の仕事をしている状態だった。
「あら、まだ絞り方が足りないようですね」
サキは微笑を引っ込めて真顔になり、クナドの頭を締め付けている『真実の輪』に向けて念を送った。
性欲を主な動力源としていた哀れなクナドは、全身の欲望を搾り取られる苦痛と恐怖を味わった。
「や…………もう、やめ…………て」
「やめてほしい?」
サワはしめ縄の力を強めた。
「ギュワッ!!!」
クナドは猛獣の叫びに似た声をあげている。
「やめ…………」
狐の霊獣イズミは左の口角を上げ、悪戯を思いついた子供のように笑った。
「『最後の盃』!」
イズミが呪文を唱え終わると、白銀色の盃台が現れた。
「溜まったら、やめてあげる」
盃台に乗せられた白銀色の盃と銚子が浮かび上がり、巨大化していく。
「うーん。ちょっと入りきらないかな」
イズミがパチンと指を鳴らすと、盃は巨大な白銀色の蓋つき湯呑《ゆのみ》の形に姿を変えた。
「…………?」
クナドは力尽きる寸前の表情で、ただ茫然とその巨大な湯呑を見つめている。
イズミはクナドの耳元で囁いた。
「私達の血を何だと思ってるの?」
パチン! とイズミが指を鳴らしたその途端。
クナドが再度、悲鳴を上げた。
「ぐああああああぁっ!!!」
銚子が空中に浮かびあがり、盃の中にどんどん、どんどん、どす黒い血を注ぎ始めた。
絞られたばかりのクナドの血だ。
「「「おおおーっ!!!」」」
女の子達は、三人そろって拍手をした。
「すごい! 見たことないわ、こんなに汚い血!」
「女の子を呪うエロ男の血ですわね。一体何人の血を、吸い続けてきたのでしょうか…………」
「何千年、ううん、何万年にもわたるこの男の、ゲス歴史の賜物よ」
血はどんどん、どんどん、盃、いや巨大な湯呑の中に溜まっていく。
「この血を見る限り、卑怯な手を使って無理やり吸ったものは、どうやら一滴も無いようですね。きわめて残念なことに、この男の口車に乗って血を吸わせしまったバカでゲスな女たちが大変多かった、という事でしょう」
サキは冷静に、クナドの血について分析し出した。
「ちょ…………僕の血について、解説するのやめて…………」
「ゲス男の誘いに乗って、ゲス男のハーレムに入って、ゲス男とイチャイチャして、ゲス男と共に幸せになりたい欲まみれ女達など、ただのゲス女に過ぎないのに……。これだからゲス共は手に負えないのですわ。おお汚らわしい!! ゲスは死滅せよ!!!」
「や…………やめてやめてやめて下さい…………苦しいっ…………」
クナドの苦しみは、さらに追い打ちをかけるような拍車がかかった。
「さっきからあなたがしてきた事と、同じ事をしているだけです」
サキが言った。
「………………」
「あなたの様な男には、私達の血は飲ませてあげない!! ゲスと関わるのはごめんだわ」
サワの言葉に、サキは頷く。
「ゲスは死滅して下さい」
「女は甘いジュースじゃないのよ」
イズミは言葉を続けた。
「思想を持った生き物なの。女は男の反対側というだけ。あなたが変わらない限り……永遠に、お姫様の血を飲むことはできないわ」
クナドはがっくりと、石に括り付けられたまま首を垂れた。
「…………意識を失ったかしら?」
放心したように見える。
死んだようにも見える。
欲望の大部分を抜き取られたのだ、無理もない。
カナメは生唾を呑み込んだ。
これが、真の女の恐ろしさだ。
自分がされたような心地がする。
「…………もういい」
カナメの声が聞こえ、三人の霊獣の女の子達は振り向いた。
彼女らは生き生きしながら、カナメに尋ねた。
「あ、カナメ様!」
「邪な血をかなり吸い取りました!」
空中に浮かんだ白銀色の湯呑には、タプタプになるまでクナドの血が溜まっている。
イズミは呪文で蓋をタッパーのような素材に変え、ピッタリと上から蓋をして密封した。
「どのように処分しましょう?」
その湯呑に呪文をかけ、手のひらにおさまる小さなサイズに変え、イズミはそれを左手で持った。
カナメは複雑な気持ちで、三人の女の子達をまじまじと見つめた。
恐ろし過ぎる。
女性には気をつけよう。
どうしても手に入れたくば、たった一人を見つけ、大切に守ろう。
そうしよう。
「本殿の外へこの男を放り出す」
「ええ~? こんなに弱っているのに? 今がチャンスですよ?」
「殺しても良いのです」
「道の神の力は強大だ。我々の力では歯が立たぬ。ここまで力を削ぎ落しただけでも良しとせねばなるまい」
三人の女の子は目を見合わせ、しぶしぶ頷いた。
「これよりクナドを本殿から放り出し、二度と入れぬよう閂をかける」
カナメの指示を受け、三人の女の子達は頷いた。
「「「かしこまりました」」」