桃色のドラゴンと最強神~ドラゴン・ノスタルジア ~∞クスコ∞
会議室に集う八神
白龍神・深名孤が最強神の部屋に姿を現したという出来事は即座に、天界中に広まった。
高天原の中心には一番の高さを誇る、『桃螺』という名の塔がある。
そこに全世界に影響を与える神々のトップが集結している。
最強神と、時の神・爽と、風の神・久遠を除いて。
ちなみに八神とは、以下のメンバーだ。
最強神・深名孤。
風の神・久遠。
闇の神・伽蛇。
時の神・爽。
霧の神・狭霧。
雷の神・聖牙。
氷の神・冷那。
光の神・遊子。
桃螺の最上階では、高天原会議が開かれようとしていた。
「遊子様。ご存知でしたか? 私、つい先ほど小耳にはさんだのですが、何でも深名斗様が反転されてしまい、今おわすのは白龍側の最強神である、深名孤様だというではありませんか!」
「いえ、それは初耳です。……それより、この会議は一体ぜんたい何時に終わるのでしょうか?」
やっと青年になりかけたばかりの、ぼさぼさ頭の容貌の男が、氷の神・冷那の言葉に、大あくびをしながら面倒臭そうな表情で返事をした。
「前代未聞の事態ですから、会議は相当長くなると思いますよ」
「えーマジかー……………………うげー…………」
最強神が反転をした事により、自分がゲームをして遊ぶ時間が減ってしまう。
その事が遊子にとっては、最大の苦痛だった。
「遊子様はこの事について、どう思われます?」
「どうって言われても……」
「これまで長年黒龍神に仕えていた我々は、解散になってしまうと思われますか?」
「さあ…………なるようにしか、ならないんじゃ無いですか? それよりこの会議、僕にとってはつまらなさそうですから、早く終わらせましょう」
「もう、あなたは本当に頼りないですね!」
冷那は冷ややかな目で遊子を睨んだ。
「だってそうしないと今日は、『神獣どぎまぎメモリアル4』の続きが出来なくなるじゃないですか!」
八神の中では比較的真面目な冷那が、ゲーマー遊子の態度にブチギレる。
段々とその怒りはエスカレートし、今までの彼の生き方や態度、清潔感が無いところ、すぐにオナラやゲップをするところに至るまで、全てをディスる方角へと変わってゆく。
まわりの神々はそれを止めもせず、無関心のまま黙って見ている。
基本的に神々は、それぞれの我があまりにも強すぎるため、チームワークを組むことに適していない。
よって神々の集まりに、まとまりを求めてはならない。
みな、自分の事しか考えていないのだから。
最強神二体の反転を目の当たりにしたことのある神々など、現代ではもういない。
元々は彼らが二体存在するという驚愕の事実や、高天原にいない方の最強神を『クスコ』という呼称で扱う事などを、ほとんどの神が知り得ない。
「でも、こうも考えられますわ。これでもう、我々は深名斗様の我儘に付き合わなくて済むのですよね?」
霧の神・狭霧がフフフと声を上げて、ほほ笑んだ。
最強神が二体いるという真実を、側近である彼らだけは最初から知っていた。
反転により、高天原に残るのは常にどちらか一体であるという事も。
桃螺に集う彼らは文献でその事を知っており、今まで対応したことの無かった今回の事象にどう対応するか、話し合う羽目に陥っている。
一応席に座ってはいるのだが、全員が好き勝手な事ばかり脳内で展開していた。
『まーた深名斗様が問題を起こしたのか。やれやれ、迷惑な話だ』
『人間世界と繋がっている出入り口をもう、塞いでしまえば簡単でいい』
今回の反転は、神々の世界を震え上がらせると同時に、安心させた。
黒龍側の最強神・深名斗は重罪により、部屋から出ないよう見張られ、監禁されていた。
もう一人の自分である、白龍側の最強神・深名孤を殺そうとした罪だ。
だが深名斗は、人間の世界へと姿を消した。
誰に何を告げるでも無く。
「そうではありませんか? 聖牙」
「確かに。もう、うんざりでしたから、あのボクちゃんに付き合わされるのは」
聖牙と呼ばれた黄金色の神を持つ少年が、ズキズキする頭を押さえながら返事をした。
形成が逆転し、深名孤が神々の世界に戻ったため、今まで黒龍側が好き放題に行ってきた悪事が次々と、明るみになってゆく。
一番多かった罪は、生き物の魂を好き勝手に奪い、食べてしまう事だ。
その悪行を深名斗は放置し、彼自身も積極的に魂を喰っていた。
強い黒龍は、何もかもを奪い尽くすまで自分を止める事はない。
自害しようとしたのは黒龍神の深名斗であり、深名孤には何の罪も無い。
謹慎は解かれ、深名孤は神々の世界を自由に行き来できるようになるだろう。
深名斗がいる人間世界を別として。
桃螺に集う八神のうちの五神は、次期最強神候補とみなされており、いずれも最強神・深名斗の側近に選ばれたメンバーばかりである。
「おお嘆かわしい。おお情けない! 世も末ですわ。深名斗様は人間の世界へ行ってしまわれたというではありませんか。我々は何も知らされていなかったのですよ? いつもいつもお茶くみばかりさせられて、挙句の果てにはないがしろにされ……」
「おだまりなさい、カシャ」
狭霧が闇の神・伽蛇のお喋りを制した。
自分の話はたびたび脱線し、あらぬ方へ行ったり、余計な話が多くなったりするくせに、彼女は自分以外のお喋りに我慢が出来ないタチだった。
「会議が始まりますよ。もうすぐ久遠様と深名孤様がいらっしゃいます」
「…………えらっそうに、霧のくせして」
堂々と悪口を言い放つカシャに対し、狭霧は知らん顔を決め込んでいる。
本能の赴くまま強欲で自分勝手に生きているため、不確かで悪い噂が一旦広まっただけで、容赦無くゴミの様に、自分達が本来守るべき生き物を見捨てる神も大勢いる。
何が幸せで何が不幸なのか、わかっていない神も多い。
個々の力がとても強いせいもあり、ごく一部の狂った神達は、異端や、自分に害を及ぼしそうな者、自分よりも力が弱い者に容赦無く拷問をふるう。
彼らはほんのちょっとの体や心の弱さが理解できず、それを許そうとしない。
弱者を自分達の思うままにするだけの、ちっぽけな存在だと思っており、激しい虐待をしてなぶり殺す者も多い。
黒蛇の伽蛇が不快そうに、ゆらりと席から立ち上がった。
彼女はその美貌で強い神に取り入り、絶大な権力を欲しいがままにしている。
この闇の神・伽蛇こそが大地を隔離室に入れた張本人だった。
元々はただの黒蛇だったが娼婦(夜のお相手)をして成り上がり、その美貌で強い神々に取り入り、絶大な権力を欲しいがままにしている女である。
だが、どんなに彼女が巧緻を巡らせても、風の神・久遠だけは思いのままにならなかった。
それどころか彼は、人間の女と結婚してしまったのである。
伽蛇は久遠を恨み、久遠の妻である弥生を恨み、生まれた子供である大地を恨んだ。
彼女は隙あらば、人間を見捨てようとしている。
神々が最強神二体の反転について話し合っている時に、異変が起きた。
人間世界のどこかの時間で、強大な力が発生している。
黒天枢だ。
会議室の戸が開く。
最強神・深名孤が血相を変えて中へ入り、自己紹介も無いままに、八神に向かってこう叫んだ。
「誰でもよい、人間の世界へ行ってはくれぬか! ワシには出来ぬのじゃ!」
高天原の中心には一番の高さを誇る、『桃螺』という名の塔がある。
そこに全世界に影響を与える神々のトップが集結している。
最強神と、時の神・爽と、風の神・久遠を除いて。
ちなみに八神とは、以下のメンバーだ。
最強神・深名孤。
風の神・久遠。
闇の神・伽蛇。
時の神・爽。
霧の神・狭霧。
雷の神・聖牙。
氷の神・冷那。
光の神・遊子。
桃螺の最上階では、高天原会議が開かれようとしていた。
「遊子様。ご存知でしたか? 私、つい先ほど小耳にはさんだのですが、何でも深名斗様が反転されてしまい、今おわすのは白龍側の最強神である、深名孤様だというではありませんか!」
「いえ、それは初耳です。……それより、この会議は一体ぜんたい何時に終わるのでしょうか?」
やっと青年になりかけたばかりの、ぼさぼさ頭の容貌の男が、氷の神・冷那の言葉に、大あくびをしながら面倒臭そうな表情で返事をした。
「前代未聞の事態ですから、会議は相当長くなると思いますよ」
「えーマジかー……………………うげー…………」
最強神が反転をした事により、自分がゲームをして遊ぶ時間が減ってしまう。
その事が遊子にとっては、最大の苦痛だった。
「遊子様はこの事について、どう思われます?」
「どうって言われても……」
「これまで長年黒龍神に仕えていた我々は、解散になってしまうと思われますか?」
「さあ…………なるようにしか、ならないんじゃ無いですか? それよりこの会議、僕にとってはつまらなさそうですから、早く終わらせましょう」
「もう、あなたは本当に頼りないですね!」
冷那は冷ややかな目で遊子を睨んだ。
「だってそうしないと今日は、『神獣どぎまぎメモリアル4』の続きが出来なくなるじゃないですか!」
八神の中では比較的真面目な冷那が、ゲーマー遊子の態度にブチギレる。
段々とその怒りはエスカレートし、今までの彼の生き方や態度、清潔感が無いところ、すぐにオナラやゲップをするところに至るまで、全てをディスる方角へと変わってゆく。
まわりの神々はそれを止めもせず、無関心のまま黙って見ている。
基本的に神々は、それぞれの我があまりにも強すぎるため、チームワークを組むことに適していない。
よって神々の集まりに、まとまりを求めてはならない。
みな、自分の事しか考えていないのだから。
最強神二体の反転を目の当たりにしたことのある神々など、現代ではもういない。
元々は彼らが二体存在するという驚愕の事実や、高天原にいない方の最強神を『クスコ』という呼称で扱う事などを、ほとんどの神が知り得ない。
「でも、こうも考えられますわ。これでもう、我々は深名斗様の我儘に付き合わなくて済むのですよね?」
霧の神・狭霧がフフフと声を上げて、ほほ笑んだ。
最強神が二体いるという真実を、側近である彼らだけは最初から知っていた。
反転により、高天原に残るのは常にどちらか一体であるという事も。
桃螺に集う彼らは文献でその事を知っており、今まで対応したことの無かった今回の事象にどう対応するか、話し合う羽目に陥っている。
一応席に座ってはいるのだが、全員が好き勝手な事ばかり脳内で展開していた。
『まーた深名斗様が問題を起こしたのか。やれやれ、迷惑な話だ』
『人間世界と繋がっている出入り口をもう、塞いでしまえば簡単でいい』
今回の反転は、神々の世界を震え上がらせると同時に、安心させた。
黒龍側の最強神・深名斗は重罪により、部屋から出ないよう見張られ、監禁されていた。
もう一人の自分である、白龍側の最強神・深名孤を殺そうとした罪だ。
だが深名斗は、人間の世界へと姿を消した。
誰に何を告げるでも無く。
「そうではありませんか? 聖牙」
「確かに。もう、うんざりでしたから、あのボクちゃんに付き合わされるのは」
聖牙と呼ばれた黄金色の神を持つ少年が、ズキズキする頭を押さえながら返事をした。
形成が逆転し、深名孤が神々の世界に戻ったため、今まで黒龍側が好き放題に行ってきた悪事が次々と、明るみになってゆく。
一番多かった罪は、生き物の魂を好き勝手に奪い、食べてしまう事だ。
その悪行を深名斗は放置し、彼自身も積極的に魂を喰っていた。
強い黒龍は、何もかもを奪い尽くすまで自分を止める事はない。
自害しようとしたのは黒龍神の深名斗であり、深名孤には何の罪も無い。
謹慎は解かれ、深名孤は神々の世界を自由に行き来できるようになるだろう。
深名斗がいる人間世界を別として。
桃螺に集う八神のうちの五神は、次期最強神候補とみなされており、いずれも最強神・深名斗の側近に選ばれたメンバーばかりである。
「おお嘆かわしい。おお情けない! 世も末ですわ。深名斗様は人間の世界へ行ってしまわれたというではありませんか。我々は何も知らされていなかったのですよ? いつもいつもお茶くみばかりさせられて、挙句の果てにはないがしろにされ……」
「おだまりなさい、カシャ」
狭霧が闇の神・伽蛇のお喋りを制した。
自分の話はたびたび脱線し、あらぬ方へ行ったり、余計な話が多くなったりするくせに、彼女は自分以外のお喋りに我慢が出来ないタチだった。
「会議が始まりますよ。もうすぐ久遠様と深名孤様がいらっしゃいます」
「…………えらっそうに、霧のくせして」
堂々と悪口を言い放つカシャに対し、狭霧は知らん顔を決め込んでいる。
本能の赴くまま強欲で自分勝手に生きているため、不確かで悪い噂が一旦広まっただけで、容赦無くゴミの様に、自分達が本来守るべき生き物を見捨てる神も大勢いる。
何が幸せで何が不幸なのか、わかっていない神も多い。
個々の力がとても強いせいもあり、ごく一部の狂った神達は、異端や、自分に害を及ぼしそうな者、自分よりも力が弱い者に容赦無く拷問をふるう。
彼らはほんのちょっとの体や心の弱さが理解できず、それを許そうとしない。
弱者を自分達の思うままにするだけの、ちっぽけな存在だと思っており、激しい虐待をしてなぶり殺す者も多い。
黒蛇の伽蛇が不快そうに、ゆらりと席から立ち上がった。
彼女はその美貌で強い神に取り入り、絶大な権力を欲しいがままにしている。
この闇の神・伽蛇こそが大地を隔離室に入れた張本人だった。
元々はただの黒蛇だったが娼婦(夜のお相手)をして成り上がり、その美貌で強い神々に取り入り、絶大な権力を欲しいがままにしている女である。
だが、どんなに彼女が巧緻を巡らせても、風の神・久遠だけは思いのままにならなかった。
それどころか彼は、人間の女と結婚してしまったのである。
伽蛇は久遠を恨み、久遠の妻である弥生を恨み、生まれた子供である大地を恨んだ。
彼女は隙あらば、人間を見捨てようとしている。
神々が最強神二体の反転について話し合っている時に、異変が起きた。
人間世界のどこかの時間で、強大な力が発生している。
黒天枢だ。
会議室の戸が開く。
最強神・深名孤が血相を変えて中へ入り、自己紹介も無いままに、八神に向かってこう叫んだ。
「誰でもよい、人間の世界へ行ってはくれぬか! ワシには出来ぬのじゃ!」