水に溺れた君と夏
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…気持ちよすぎて寝てた。
4時30分か…。そろそろ先生に出しにいくかぁ。日誌。

まぁ遅いけどね。

教室の日光が差し込む暖かさを少し名残惜しく思いつつもしっかり鍵を閉めて職員室へ向かう。

「失礼します。先生、日誌と鍵です。」

「おー、宮川。さんきゅーな。」

「いえ。失礼しました。」

ほんと、今日はよく晴れてるなぁ。
綺麗な夕やけがでそうだな、なんて思いながら冷水機に向かう。

喉が乾きすぎて死にそうである。
夏は水分補給が大事だからね。


うん、生き返る。
冷水機の水って冷たいから好きなんだよなぁ。

日光に当たって温くなる水をよく飲んでたのが少し、恋しいなぁ。なんて。─

「宮川。日誌ありがとな。」

「びっくりした。どういたしまして。」

そんなことを考えていたからか足音にまったく気付かなかった。

「ちょっと、来て。」

「え?」

いきなり手首を掴まる。

「ちょ、吉良君。どこいくの?」

なんて声も無視。
せめて行き先は言ってくれないかなぁ!
なんて少しの苛立ちを感じつつもよく知った匂いが鼻を掠める。
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