水に溺れた君と夏
「最近、全然タイムが縮まらなくて。
いわゆる、─スランプ─なんだ。
それ同時に、あいつの父親弁護士なんだけど、大好きな水泳について色々言われたみたい。
むしゃくしゃしてるみたいで、今色々焦ってるんだと思う。」

…スランプで焦るのはわかる。
でもその焦りが
─ケガのもとになるから。─

「…なん、でその話を、私に?」

なんで、私に言ったのか。

「なんでだろうね。無責任だけど、伊月ちゃんならどうにかしてくれるって思っちゃったんだ。」

「─陽都を、支えてあげてほしいんだ─」

─支える?─
そんなことが私にできるのか?

なにもかも中途半端で、
投げ出した私に。

ガチャ

「おやつだよっ!美味しそ~!」

ありがたかった。
今きっと、ものすごく戸惑ってる顔をしてるだろうから。

「食べよ?いづ!」

心を落ち着かせて

「うん、そうだね。」

…今はどうしたらいいか、なんて分からないけど。

いつか、いつか支えられるときがくれば、
支えようと思う。

そんな光景を上田君が優しく笑ってみてたと知るのは、そう遠くない未来。
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