水に溺れた君と夏

「どうしたの!?」

瑠璃も慌てたように聞く。

「陽都がっ」

吉良君?
今日は学校来てないけど…まさか。

「吉良君が、どうしたの?」

「陽都が昨日、部活で無理して捻挫したって!本人は軽い捻挫だって言ってるけど、あいつ、誰よりも水泳が好きだから…。」

─いわゆる、スランプなんだ。─

あぁ、分かってたのに。
スランプで焦って、ケガをしてしまう可能性が少なくないことなんて、知ってるのに。

「陽都の声がすごく落ちてたから、いてもたってもいられなくて。俺、なんにも出来ないのは嫌なんだよっ!」

分かるよ。
梓月がそうなったとき、何も出来ない自分に苛立ったときもあった。

未練たらたらだけど、
─梓月には水泳を続けてほしくて─
< 29 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop