水に溺れた君と夏
少し生ぬるい風が頬を掠める。

「で、話ってどうしたんだ?」

怖い気持ちを抑え、彼に訪ねる。

「…足の捻挫は、大丈夫?」

「郁か。…あぁ大丈夫だよ。軽い捻挫だし。」

「それじゃあ…心は大丈夫?」

怖い。きっと返ってくる言葉は良いものでは決してないだろう。
ずかずかと、無神経に入り込まれれば焦るし、怖くなる。

「…はっ?心は、って。」

「水泳。しばらくできないけど」

スランプに陥って水泳を
一度は"やめたい"と思ったかもしれない。

そして今、ケガをしてもう無理だと。
限界を感じているかもしれない。

ケガによって余計に心は追い込まれているだろう。
< 36 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop