水に溺れた君と夏
「瑠璃、何があったの。」

すると瑠璃は驚いた顔をする。
だがすぐに納得したような顔して

「ほら!見てみなよ。
吉良くんが泳ぐんだって!」

「あぁ、なるほど。」

吉良 陽都《きら はると》
少し幼い顔立ちで、男子にしては少し低めの身長。
それでいて─将来有望な天才的スイマー─明るくクラスのムードメーカー的存在な人気者である彼。
夏の人気は一味違う。水泳部に所属する彼を見に来る女の子も少なくない。
そしてあのほどよくついた筋肉。
そのギャップにやられる女子は多い。

私はあの綺麗についた、
水泳選手特有の逆三角形についた筋肉が
すごく、羨ましい気持ちになる。

あの形にするのは簡単なことではない。
彼の努力が見られる。

あぁ、すごいな。
少しの羨ましい気持ちを抑え瑠璃に

「先、着替えてくる。」

そう言ってその場を離れた。

あれ以上見たらきっと泣きそうになる。
いつまでたっても拭いきれないままの思いで─

椅子に座りながら天を仰ぐと
またもや女子の甲高い声が聞こえる。

きっと彼が泳ぎ終えたのだろう。
少しでも、離れるように

私は速足で教室へ戻った。
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