水に溺れた君と夏
「なぁ、伊月。泳げるようになっただけで嬉しいけどさ、やっぱり出来るなら
─優勝したい。─」

そう、だよね。
限りなく低い可能性だとしても願ってしまうもの。
そのために頑張ってる人だって少なくない。

「うん、そうだね。
でもそれは頑張るしかないからさ。」

ほんとにこれは努力次第だよ。
どれだけ才能のある人だって、上まで行ってしまえばそれまでだ。

その"限界"を壊すためには
努力と、そして少しの"運"が必要。

「明日、さ。部活…来てくれるか?」

「…私、水泳部のマネでも部員でもないよ。」

太陽が肌を照りつけて
波をうって光る水がおいでって

それに手を伸ばすように
泡が包み込む。

あぁ、なんだ。
結局かわらないままじゃないか。

「それでもいい。俺は、伊月に来てほしい。」

嬉しいこといってくれるなぁ。
でもね、私は臆病だから。
それでも見たい気持ちもある傲慢な奴だから。

「─大会前日だけね。─」

そうギリギリの返事をするんだ。
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