水に溺れた君と夏
そんな笑顔に居たたまれなくなって私は

「…計ろっか。」

そう返すことしか出来なかった。

私はストップウォッチを手にもち準備をする。

私の掛け声と共に彼があの日のように
綺麗なフォームで、静かに飛び込む。

水を切るように進んでいく。

この前と違うのは─
ゆっくり、一心同体かのように泳ぐ彼。
スローモーションかのように、一つ一つの動きが繊細で、綺麗だった。

きっとそう見えるのは、
彼を包む小さな気泡が前より少ないからだろう。
丁寧だけど、スピードは落とさない。
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