水に溺れた君と夏
「…うん。」

「父さんが、俺に無理はしてほしくないんだ、って。あれ言われたのがスランプの時期だったこともあって苦しかったんだ。でも父さんは、スランプの時だったからあの声をかけてくれた。」

"くれた"
それは相手を敬っているときの言葉。

「母さんが病気になったのは…ピアノでスランプになって、それが精神にきたしたらしい。もう失うのが怖かったんだって。」

それぞれが、それぞれのことを思って言葉にしたものは、すれ違えど気付けば暖かさで溢れている。

「俺に、進む勇気をくれて、ありがとう。」

驚きのあまり目を開いたけど、

「それは、こっちの台詞だよ。
ありがとう、陽都。」

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