青の世界のあなたと、記憶をなくした私との365日の恋物語
女を診ると外傷はない、身体的な問題は特に見当たらない。

ただ、意識が戻らなければなんとも言えないが、衰弱している事は
ハッキリしているので、点滴で様子を見ることにした。

処置を終え、女の病室が決まると蒼を探す。

待合室を見回しても蒼の姿は何処にもなかった。

“外か・・・?”

俺は中庭に向かった。


中庭を見渡すとベンチに腰掛け川沿いの桜を見ている蒼がいた。

「蒼、こんな所にいたのか、探したぞ。」

俺は手に持っていた缶コーヒーを蒼に渡しながら女の状態を説明した。

今まで浮いた話のひとつもない蒼に女!

きっと大事な存在なのだろうと思っていれば、俺の説明にもいまいち
反応が薄い?

「ところで、彼女とはどういう関係なんだ?」

「関係なんて無い。初対面だ。」


「ハ~!?初対面ってどういう事だよ。」

「海を散歩してて倒れているのを見つけただけだ。
 俺も初めて見る顔なんだ。」

「そ、そうなのか・・・。」

蒼は全く関係のない赤の他人だと言うが、この時の俺には、この二人の
出会いが蒼を変えてくれるかもしれないという予感めいたものがあった。

だから、蒼に女の病室に寄ってから帰ることをすすめた。


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