青の世界のあなたと、記憶をなくした私との365日の恋物語
警察の二人がいなくなると、女はホッとしたように俺から手を
離した。

一瞬、残念な気になったのは俺の思い過ごしだろう。

「あ~、そうそう、検査の結果特に外傷もないし、今日から食事
 も出来ているから、来週には退院できるんだけど・・・。」

中川が女を見て様子を伺う。

「その事だが、ちょっといいだろうか。
 俺も考えたんだが、このままだと施設に行くことになるんだろ?
 良かったら、俺の家で家政婦の仕事をしながら暮らすというのは
 どうかなと思うんだが?」

俺は一晩考えた事を二人に話した。

何となく、このまま施設に行かせるのは可哀想な気がしたのだ。

俺の言葉に女が嬉しそうに俺を見上げる。

「・・い、いん・・ですか・・・?」

絞り出すように何とか言葉を発する女。

女は自分を頼りにしているのは、態度を見ていれば分かった。

まるで、雛鳥が親鳥に縋るようなその態度に、自分の庇護欲が擽ら
れる感覚がする。

「あぁ、俺は一人暮らしだし、幸いにも使ってない部屋もある。
 身の周りの事をしてもらえると、俺も助かる。」

「そうだな!いいんじゃないか!」

中川も乗り気だ。

「じゃあ、退院までに部屋を用意しておくから、お前はそれまでに
 体を万全にすることに専念するように。」

「はい!」

女は嬉しそうに小さいながらもハッキリと返事をした。


そうして、女と俺の同居が決まった。






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