青の世界のあなたと、記憶をなくした私との365日の恋物語
病室に入ると、既に碧は着替えを済ませ、ベットに座って俺を待っていた
ようだった。

「お待たせ。」

「おはようございます。」

碧を砂浜で見つけた時に着ていた水色のワンピースは、とても碧に似合って
いた。

「碧、これから退院したら先ずは生活に必要な物を買いに行こうと思う。
 今日は、中川と奥さんに付き添ってもらうから一緒に買い物しよう。」

今まで人と関わりを持つことを極力避けてきた自分には、女性が生活に必要
なものがよく分からないため、中川に相談したところ奥さんと一緒にと今日
休みを取ってくれていた。

中川の奥さんなら、俺も知っているから安心だ。

碧は少し不安そうにしながらも、コクンと頷いた。


お世話になった看護師さん達にお礼を言って、荷物を持ち車に向かう

車の前に立ったまま、動かない碧を助手席に促しシートベルトを締めると
待ち合わせのショッピングモールへと車を走らせた。

碧は車の中から、外の景色を不思議そうに眺めていた。

「何か知っているものとか、見たことがあるものはあった?」

碧は首を横に振るだけで、また外の景色を眺めていた。



ショッピングモールの駐車場に車を停めて、降り立つと碧が不安そうに
しながら、俺のジャケットの袖を掴む。

俺は、左手で碧の手を掴むと手を繋いだ。

碧は一瞬ビックリしたような表情を浮かべたが、直ぐに安心した目を俺に
向け微笑んだ。

繋いだ左手は仄かに碧の暖かさが伝わってきて、俺自身も心が穏やかに
なるのを感じるのが不思議だった。



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