青の世界のあなたと、記憶をなくした私との365日の恋物語
俺は昔から害が無いように見えるのか、どちらかと言うと人に好かれる
タイプの人間だった。

だが、生真面目で奥手な性格故に、いつもここぞという時には、友達どまり。

警察官という多忙な仕事も重なり気がつけば27歳になっていた。

俺には出会いはないのかと諦めかけていた時、運命の出会いというか
一目惚れをしてしまった。



その日は、病院から海岸で発見された女性が記憶喪失のため、身元が判ら
ないという通報を受け、その病院に相棒の安藤久美子と共に訪れていた。

俺達の応対をしたのは、30代中頃の医師、中川 真也(ナカガワ シンヤ)だった。

「ご足労お掛けします。
 昨日、近くの砂浜で発見された女性なんですが、外傷は特にないものの
 衰弱が激しく、声も美味く出ない状態です。
 検査していたところ、自分の名前も何故砂浜で倒れていたのかも、何も
 記憶がないという事が分かりまして、ご連絡しました。」

温和な印象の中川医師の説明を聞き、安藤と目で頷き合う。

「分かりました。では、その女性の元に案内願えますか?」

「はい、こちらです。」

中川医師の後に続き俺と安藤は白い廊下を進んだ。

やがて、一つの病室の前で足を止めると、こちらを見て扉をノックした。

「はい、どうぞ。」

中からは、低めの男の声が聞こえてきた。




< 32 / 86 >

この作品をシェア

pagetop