青の世界のあなたと、記憶をなくした私との365日の恋物語
蒼さんの愛車に乗って最初に向かったのは海だった。

「碧、降りて」

蒼さんは、私の手を引き砂浜に降りて行く。

「ここは、俺と碧が初めて出会った場所だ。」

「ここだったんですね。」

最初に会った時、砂浜で倒れているのを私は助けられた。
そうか、それがこの場所だったのか。

今まで不思議とこの場所には来たことがなかったなと気がついた。

蒼さんは私の手を掴んだまま、砂浜を更に進む。

無言のまま歩く私達のギュッ、ギュッっと砂を踏みしめる音がやけに
大きく感じた。

春先なだけあって、天気は良くても海からの風はまだ冷たかったが
繋ぐ手から伝わる蒼さんの暖かさが、私の心も身体も暖めてくれる
ようだった。

やがて、目的の場所に辿り着いたのか蒼さんは足を止めた。

「ここで、碧を見つけたんだ。
 あの日はここに大きな流木があって、その陰で今、碧が着てる
 ワンピースがフワッと舞い上がったんだ。
 それで、碧を見つけた。
 もう、あの時の流木も無くなってしまったんだな・・・。」

そう言うと、蒼さんはスーツのポケットからキラリと光る何かを
取り出した。

“何だろう?”

私の頭の片隅に微かに反応するものを感じる。

「あの・・・それは何ですか?」



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