青の世界のあなたと、記憶をなくした私との365日の恋物語
砂浜から階段を上り、車の後部座席に女を横たえると、友人の
医師、中川(ナカガワ)の勤務する病院に向かい、車を走らせた。


俺は、病院の中庭にあるベンチに腰かけていた。

中庭からは、病院向こうの川沿いに咲く桜が良く見えた。

川沿いを歩く、桜を見る人の姿も多く目につく。

そう言えば、もうそんな時期なのかとぼんやりと考えていた。

(ソウ)、こんなところにいたのか、探したぞ。」

呆れたような声を出しながら友人の医師の中川が缶コーヒー片手に
現れた。

「あぁ、悪かったな。」

対してすまないという気持ちも込めずに軽く応える俺に軽く肩を
すくませながら、手に持った缶コーヒーを一本俺に手渡す。

「彼女の処置、終わったぞ。
 外傷はないが、衰弱がひどい。数日入院になる。」

「・・・そうか。」

気の無い返事を返す俺に、中川は眉をしかめる。

「ところで、彼女とはどういう関係なんだ?」

「関係なんて無い。初対面だ。」

「あ゛~!?なんだよ、それ?」

俺は簡単に、女を助けた経緯を中川に説明した。

中川は、興味深そうに俺の話を聞いた後

「じゃあ、どこの誰かも分からないのか?」

「まぁ、そういう事だな。」

中川は腕を組みながら少し考えてから口を開いた。

「とりあえず、これも何かの縁だろ。
 今、病室にいるから様子見て帰れば。」

「・・・そうだな。」


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