宇佐美くんの口封じ
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「…あ、ありがとう…」
保健室に着くと、保健の先生はいなかった。
鍵だけが開いていて、『自由に手当てしてね☆』というメモがおいてある。
…そんなに適当でいいのか、保健の先生って。
そんなことを思いながら、ベットまで運んでくれた宇佐美くんにお礼を言う。
彼はおもむろに消毒液とガーゼを取り出すと、私の膝の前にしゃがみ飲んだ。
「…じっとしてて」
「っい、いいよ!自分で出来る!」
「いいから。怪我人は黙って手当されててください」
宇佐美くんの少し強い声に圧倒されて声が出ない。
伏し目がちな彼の目。
少しだけ目にかかる前髪。
なんだか直視できなくて、消毒液が染みる振りをしてぎゅっと目を瞑った。
「倉野がすいません、…あいついつも周り見えてなくてすぐ人にぶつかったりしてて」
「っあ、全然大丈夫だよ…倉野くんにも気にしないでって伝えて?」
「…ほんと、ごめんなさい」