宇佐美くんの口封じ




申し訳なさそうに謝る宇佐美くん。

そんなに謝らなくていいのに。
宇佐美くんはなんにもしていなくて、転んだのは私の不注意でもあったんだ。


むしろ謝らなきゃいけないのは私の方で、…この間、感情のままに言ってしまった言葉を取り消したかった。




「…宇佐美くん、」

「…はい」

「…この間……、宇佐美くんと私はただの友達なのに…変なこと言ってごめんなさい」





勝手にもやもやして、
"私と宇佐美くんは違う"って線引きして、
酷いこと言って傷つけて。




「…ごめんなさい」





そう言って俯く。怖くて宇佐美くんと目を合わせることが出来なかった。

彼は今、どんな顔をしているだろう。



「せんぱい」



手当てを終えた宇佐美くんが、隣に座って優しく言葉を紡ぐ。
膝の上に乗せていた私の手に彼の手が触れたとき、またひとつ、心臓が高鳴った。





「…俺は、せんぱいのこと他と同じなんて思ってないです」

「…え?」

「雨宮せんぱいだから、…仲良くしたいと思ったんだよ」
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