宇佐美くんの口封じ





宇佐美くんの優しい声が耳に届く。
彼はそっと手を離し、───そして、私ごと包み込むように抱きしめた。




「う、さ、」

「…せんぱいは、俺のことどう思ってますか?」




急に問われた質問。
私を抱きしめる力が強くなり、制服越しに伝わる宇佐美くんの心臓の音も大きくなった。




私がずっと彼に聞きたかったことを聞かれ、言葉に詰まる。


じゃあ逆に、宇佐美くんは私のことどう思ってるの?
私のこと、“他と違う”って、具体的にどういうことなの?



私が宇佐美くんに対して抱えるこの気持ちは何なのか。

経験値0の人間を試すようなことしないで、
ピュアな私にもわかるように、教えてよ。




私は、他の誰でもない宇佐美くんに教えてほしいと思っているんだ。




「う、」





────カシャッ




思ったままに伝えようと口を開いた、その時だった。

私たちしかいないはずの、静かな空気のなかにシャッター音が響き渡ったのは。


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