宇佐美くんの口封じ
彼女はぽろぽろと涙を流しながら、「依里…」と何度も宇佐美くんの名前を呼ぶ。
そんな彼女の姿を見て、宇佐美くんはだるそうにため息をついた。
「…そんなのお前らが勝手に言ってるだけだろ。せんぱいのこと巻きこもうとすんなよ」
「っじゃあなんで先輩のことだけ特別扱いすんの!?」
「…それは、」
何も言わず2人のやりとりを聞いていた私は、宇佐美くんの口から出る続きが気になった。
ごくりと生唾を呑み込み彼の言葉を待つ。
しかし、宇佐美くんの言葉を遮って声を上げたのは彼女の方だった。
「…依里が元の依里に戻ってくれないならっ」
「っおい、それ──」
「今撮った写真、みんなにバラすから…っ!」
突き出されたスマホの画面には、つい数分前に宇佐美くんに抱きしめられているときの姿が映っている。