宇佐美くんの口封じ









「わり!俺今日もチャリ!また明日な!」

「遅刻しないでよ?」

「うっ、頑張る!」





放課後の部活が終わり、昇降口で遥馬と別れ、サラと玲の3人で肩を並べて歩く。


するとふと、「雅」と、サラが私の名前を呼んだ。



「雅って宇佐美くんと付き合ってる?」

「っ、つ、つつ付き合ってないよ!」

「えーなに?動揺しちゃってー」




息を吐くように笑う彼女に「ご、ごめん」と謝る。





「あたし、宇佐美くんと遊んでるのバレちゃったんだー」

「っえ、そ、そっか」

「ん。だからこの間彼氏と別れてきたの。部活休んじゃってごめんね」



サラの突然の暴露に、ちらりと隣にいる玲に視線を飛ばす。

彼はサラに気づかれないようにそっと人差し指を唇に当てた。


どうやら、この間玲にこの話を聞いたということは言わない方がいいらしい。




「ね、でも宇佐美くんと会ったの、雅と遭遇しちゃったとき以来なんだよねぇ。誘っても断られちゃうの」

「…そ、なんだ」

「なんか雅のことめちゃくちゃ気に入ってるみたいでさ?ね、宇佐美くんと本当に何もないの?」



そういうサラの瞳に嫉妬の色はなくて、麻央さんのように宇佐美くんに本気で恋をしているわけではないんだな、と小さく安堵する。
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